<J2:山形2-1水戸>◇第32節◇1日◇NDスタ

 進化したNO・10が、2カ月ぶりの連勝に導いた。山形がMF伊東俊(25)の2ゴールで水戸に勝利。昨季途中、愛媛への期限付き移籍で成長を遂げた男の活躍で、チームは7戦負けなしと波に乗ってきた。

 伊東の独壇場だった。前半27分、水戸の中途半端なサイドチェンジを見逃さなかった。ボールをかっさらうと、得意のドリブルで中央へ進入。迷いなく左足を振り抜いた。10戦ぶりの今季4点目で先制したが、8分後に自らのファウルでPKを献上。「自分のせいで失点した。後半にもう1点取る」。その一心だった。

 2点目も一瞬のスキを見逃さなかった。後半4分、山崎のパスを受け「トラップがいいところに置けたので、迷わず振り抜いた」と右足でミドルシュート。自身初の1試合2得点をマークした。水戸の柱谷監督が「国士舘大の後輩の、すばらしい2ゴールにやられた」と脱帽するほどの高いキック精度を見せつけた。

 愛媛への期限付き移籍から復帰した今季、誰もが「俊は変わった」と言う。強引なドリブル突破など単独でのプレーが目立ち「去年までは自分勝手とか言われていた」という伊東は、新天地で「自分のミスは自分で取り返す」という姿勢をたたき込まれて帰ってきた。故障も減り、攻守にわたって献身的にフル回転。奥野監督が「いまチームで一番気が利く選手」と絶賛するまでに変身した。

 試合後、DF西河に「(PKを与えたのは)帳消しな」と声をかけられた伊東は笑顔を見せた。「みんなの頑張りで生まれたゴール」。高い技術にフォア・ザ・チームの精神を兼ね備えた10番が、山形のために走り続ける。【鹿野雄太】