<天皇杯:広島1-1(PK3-2)甲府>◇準々決勝◇22日◇Eスタ

 リーグ王者の広島が激闘を制し、4強進出を果たした。前半23分にエースFW佐藤寿人(31)が先制弾を決めながら、オウンゴールで失点し1-1のまま延長戦へ。それでも決着が付かずPK戦(3-2)の末、準優勝した07年度以来6季ぶりに準決勝に進出。ゼロックス・スーパー杯、リーグ戦に続く今季3冠へ、あと2勝に迫った。29日の準決勝は広島-東京(国立)、横浜-鳥栖(日産)の組み合わせになった。

 スタンドが動いた。延長戦で決着が付かず、PK戦に突入する時だ。普段はバックスタンドのコーナーフラッグ寄りに陣取っている広島の応援団が、大移動を始めた。PK戦をするゴール裏にドンと構え、甲府の選手が蹴る際には、重圧をかけるようにタオルを振りながら大ブーイング。これでは集中できるはずもなく、甲府はまんまと5人中3人が外した。4強進出をアシストしたのは、まさに“12人目”の選手だった。

 決してチーム状態は良くなかった。森保監督は「(リーグ)優勝した後のメンタルの部分で、祝賀ムードも含めて切り替えが難しかった。練習も十分ではなかった」と明かした。一方で指揮官は「サポーターがゴール裏で重圧をかけてくれたおかげでPKを制することができた。元日にタイトルを取るという全員の願いがあった」と感謝。浦和移籍が決定的なGK西川も「(PKは)僕の見せ場。サポーターが一緒に守ってくれて、僕は1人ではなかったです」と笑顔で話した。

 3冠はもう少しだ。2月23日のゼロックス杯で柏を倒して今季初タイトルを得ると、リーグ戦も大逆転劇で2連覇を達成。天皇杯も頂点に立てば、これ以上ないシーズンになる。

 競り合いの際、偶発的にオウンゴールをしてしまったDF千葉は「(3冠を)意識してます。気合入ってますから!」。先制弾のエース佐藤は「マインツの岡ちゃん(岡崎)が、2点取ったのを映像で見て、ゴールに向かう姿勢をイメージした。決勝でカップを掲げたい」ときっぱり。初春の頂上へ。あと2勝だ。【益子浩一】