チーム最小兵が“頭”で勝負する。J2札幌の新加入MF菊岡拓朗(28)が、今日30日に沖縄金武町で行われる琉球大との初の練習試合で先発出場する。初実戦のテーマは得点やアシストではなく、味方の特長分析を最優先。身長163センチと小柄だがプロ6年間、相手の動きだしに合わせたパスや連係、フォローを考えることで生き抜いてきた。まずは高い技術と頭脳的な動きで、財前監督にアピールしていく。

 仲間の良さを引き出し、自分をアピールする。菊岡は沖縄合宿10日目となった29日、戦術練習で左右のサイドハーフに入ってプレー。タイミングを見て中央に入り込みパスを受けると、ワンタッチではたいて、走り込んだMF荒野のシュートシーンを演出した。「札幌ユース出身の選手は、うまいしスペースに走れる。前向きにプレーできるようなボールを出せば、いい攻撃ができる」。味方を生かす菊岡イズムを早くも発揮した。

 今日30日の琉球大との練習試合は、新加入ながら人気投票で先発メンバーに選ばれた。「まず他の選手の特長を把握すること。味方の特長を頭に入れて相手が何を考えているかを考えながらやりたい」とテーマを掲げた。人気だけで先発できるのは今回のみ。ここからは高い分析力を駆使して、開幕切符を引き寄せる。

 素早くスペースをみつけるクレバーさと、正確な技術で、体格のハンディを補ってきた。ベースには法大、東京V時代の恩師川勝良一氏(55)の指導がある。「1つ1つのプレーを大事にしろ。手を抜くな。頭を使え」。10、11年に在籍した東京Vでは同氏に背番号10を託され、徹底したパスサッカーの軸となり攻撃を組み立てた。財前監督が目指す、ボールを動かし崩すスタイルには共通項が多く「経験が生きる。入りやすい」と手応えを示した。

 クラブでは攻撃力アップの最大キーマンとして考えている。三上大勝GM(42)は「主力級のオファーを出した。それだけ期待しているということ」と話した。この日の戦術練習を見た財前監督は「菊岡と石井は早くも、いい感じで絡めているね」と順応性の高さを認めた。視野が広くテクニック抜群の28歳。163センチの小さなチャンスメーカーが、財前札幌の攻撃に厚みを加える。【永野高輔】