<J1:柏1-1東京>◇第1節◇1日◇柏<ゲームのツボ>

 コンマ数秒の攻防を、日本代表の東京GK権田修一(24)が演じ、同点弾を喫した。向かって左から柏FW工藤が放ったシュートに対し、権田のイメージは「外にはじいて、右ポストの外側を通そうと思ったけど、数ミリ、数センチだけちょっと(タッチが)薄かった」。前へはじけば、柏攻撃陣が猛然と詰めてくる。目いっぱい振り抜かれたシュートの威力を、あえて右へ流すことを選択。出した右手はわずかに足らず、ポストに当たって吸い込まれた。

 狙い通りにはいかなかったが「一瞬」の攻防を繰り広げたのも名伯楽の存在があったから。今季からGKアドバイザーとしてエルメス・フルゴーニ氏(66)が就任。90年代にセリエAパルマの育成でイタリア代表GKブフォンを育てた。今季始動から約1カ月半、あらゆるパターンの練習を繰り返した権田は、一瞬の攻防の極意を教わった。

 「強く言われたのは2点。慌てないこと。そして自信を持って判断すること。そうすれば最後にいい選択ができると言われ続けた」。当たり前のように聞こえるが、その意識が「一瞬」の中に時間を吹き込み、高次元の判断ができる余裕を生んだようだ。だから胸を張って言う。「選択は間違っていなかった。あとは僕の技術の部分」。そして試合後にフルゴーニ氏から言われた言葉は「明日の午前、練習だ!」。まだまだ特訓は続く。【栗田成芳】