<J1:広島0-2浦和>◇第3節◇15日◇Eスタ

 Jリーグから史上初の無観客試合処分を受けた浦和が、12、13年のリーグ王者広島に完勝した。前半42分にFW興梠慎三(27)のゴールで先制し、後半ロスタイムにMF原口元気(22)がダメ押しゴール。守備陣の集中力も高く、今季2度目の完封。アウェーに駆け付けた約1800人のサポーターに再スタートの白星を届けた。19日のナビスコ杯アウェー柏戦を挟み、23日にホームで無観客試合(対清水)に臨む。

 試合終了後、ゴール裏に向かったのは選手だけではなかった。ペトロビッチ監督やコーチ、同行したスタッフを含めて約30人が1列に並び、つないだ手を挙げた。横断幕や旗はなくても、声と手拍子で鼓舞したサポーターに感謝を伝えたかった。「ありがとう」。目を赤くしたサポーターも呼応した。「We

 are

 Reds!」の大合唱のもと、制裁処分決定直後の試合で一丸となった。

 13日にJリーグ史上初の無観客試合処分を受け、絶対に負けられない試合だった。立ち上がりから試合を優位に進めて前半42分に興梠が頭で先制すると、後半ロスタイムには今季からエースナンバー9を背負う原口が右足で加点した。原口はユニホームのエンブレムをつかんで広告看板を乗り越えると、一目散にゴール裏へ。サポーターに向けて絶叫した。「サポーターの協力がないと勝てない。それをもう1度伝えたいと思って。結果を出すことで、ネガティブな要素が多かった状況をポジティブに変えられるのではないかと思ってやった」と言い「絶対に泣いてないよ」と笑った。

 先制点の興梠は、前日14日の練習後「すいません」とだけ言い残して取材エリアを通り過ぎた。受けた処分を整理し切れないでいた。ピッチに立ち、緊張感に触れることで答えが見つかる気がした。ゴール後、槙野、森脇とスタンドを指さした。「いろいろとあったが、ともに戦ってくれている。声援がないと思い切ってプレーできない」。サポーターへの感謝の気持ちがわき上がった。

 槙野は「処分をだれもサポーターのせいにはしていない。深い絆で強くならなくちゃいけないと思う。今日が出発点。僕らはピッチでの結果で、それを示していかなくてはいけない」。勝っても処分は覆らない。だが、白星は苦境を乗り越える手段になる。浦和がひと回り強さを増して、23日の無観客試合を迎える。【高橋悟史】