Ｊ１で首位を走る鳥栖は８日、尹晶煥（ユン・ジョンファン）監督（４１）を７日付で解任したと発表した。クラブは記者会見で来季以降の尹監督との考え方や方向性の違いなどを解任理由としたが、来季の契約をめぐり、早期の契約更新の要望、契約金の高騰がネックになった模様だ。吉田恵コーチ（４１）が昇格し、きょう９日のアウェー広島戦から指揮を執る。電撃解任に選手にもショックが広がった。

　佐賀・鳥栖市で行われたクラブ側の記者会見。リーグ首位に立つ指揮官の解任劇について、永井隆幸強化部長は「お互いの将来を重ねていった結果。食い違いというか、来年以降の考え方のところに相違まではいかないが、そういう部分があった」と説明した。

　Ｗ杯期間中から尹監督と約１０回にわたり話し合いを重ねたが、折り合わなかった。７日に最終決断が下された。同部長は首位を走るチームに亀裂が生じていたことを明かし、尹監督の手法について「（選手への）気配りであったり、ケアであったり。出ている選手は問題ないが、出ていない選手もいる。そこの導き方」と問題点を指摘した。

　契約をめぐる交渉決裂は否定したが、クラブ幹部は契約上の問題もあったと明かした。単年契約（推定２０００万円）の尹監督から早期の契約更新を求められた。クラブ幹部は「クラブとしてはできなかった。こんな時期、先に監督だけ決められない」と拒否したという。資金が潤沢でない地方クラブだけに、契約金についても「金額がクラブで出せないのもあった。勝てばいくらでも上げるというのはできない。（高騰が）１つのネックになった」と明かした。

　尹監督は１１年に監督就任以来、就任１年目でＪ１昇格に導くなどチームの礎を築いてきた功労者だ。アジア・チャンピオンズリーグ（ＡＣＬ）出場を目指す今季は１８戦を終え、首位に躍進。評価は急上昇していただけに苦渋の決断だった。今日９日のアウェー広島戦は、吉田コーチが新監督として指揮を執る。この日、尹監督は姿を見せなかった。永井強化部長は広島戦後、地元の練習場などで選手らにあいさつする場を設けたい意向だが、実現するかは分からない。【菊川光一】