<J1:清水1-3鹿島>◇第21節◇23日◇アイスタ

 鹿島の元日本代表MF小笠原満男(35)が、J1新記録となる「16年連続ゴール」を決めた。1点を追う後半16分、MFカイオが獲得したPKを託され、右足でゴール右下の隅に蹴り込んだ。「PKは端っこに蹴れば入るんだよ」と冷静だったが、15年連続で並んでいた元日本代表FW中山雅史氏(46)とG大阪MF遠藤保仁(34)を抜き、リーグで唯一の存在となった。

 圧巻だったのは、その7分後だ。ゴール正面、約23メートルの位置で得た直接FK。右足で、今度はゴール右上を射抜いた。U-21日本代表候補GK櫛引が1歩も動けない芸術弾。07年8月15日の千葉戦以来、約7年ぶりとなる1試合2発で快挙に花を添えた。プロ2年目の99年から続けてきた大記録。サポーター席に駆け寄って喜びを分かち合った。

 昨オフ、左膝の手術を受けた。過去に前十字靱帯(じんたい)や半月板の損傷を負い、選手生命を奪われかねない危機もあった箇所だ。近年は痛みと付き合いながらプレーを続けてきたが、関節鏡を通して内部をクリーニング。本人は「何もしてないよ」と笑って手術のうちに数えないが、歴戦の傷をメンテナンスしたことで衰え知らずだ。今季も全21試合に先発出場し、昨季より1カ月半早い今季初ゴールを決めてみせた。

 節目にも、いつもの言葉を繰り返す。「記録にはホント興味ない。自分の仕事はゴールじゃなく、チームを勝たせることだから」。この日はG大阪の遠藤も得点したが、昨年がJ2だったため途切れていた。チームを常に勝たせてきた小笠原らしい勲章とも言える。

 小笠原の躍動でチームは今季初の4連勝。首位浦和と2差の3位に浮上した。08年以降、2分け4敗と鬼門だったアイスタでの逆転勝ちに導いたが「先に失点してるから喜べない。もっと上を目指さないと」。最多16冠の常勝軍団を支える主将。5年ぶりの優勝へ、個人記録には喜びの余韻すら残さなかった。【木下淳】