<J1:広島2-0仙台>◇最終節◇6日◇Eスタ

 ヤナギ、ありがとう-。仙台FW柳沢敦(37)がアウェー広島戦で19年間の現役生活に幕を閉じた。雪が舞う後半19分にピッチに入ると、同38分に決定的なシュートを放つなど最後までゴールを狙い続けた。試合は敗れ、9勝11分け14敗の14位でシーズンを終えた。

 ラストゲームで最大のチャンスをつくったのは柳沢自身だった。0-2の後半38分、MF野沢のCKをDF上本が頭で後方へ流すと、ゴール前で待つ柳沢のもとへ。右足裏で技ありのシュートを放ったが、昨季まで仙台でチームメートだったGK林に阻まれた。富山から駆けつけた父昭行さん、富山第一高時代の恩師・長峰監督らが見守る中で19年の現役生活を終えた37歳は「試合終了の笛が鳴った瞬間は、みんなへ『ありがとう』の気持ちしか浮かばなかった」と充実した表情で振り返った。

 仙台での4年間を全開で走り抜けた。4日の引退会見で「仙台の人たちの心をガッチリつかめなかった」と話したが、サポーターは柳沢がピッチに入る前から応援歌を歌い続けた。試合後は真っ先に、ユニホームや横断幕が掲げられた応援席へ。「柳沢敦、応援歌のとおり、全開で行けるところまで来ました。本当に幸せな4年間でした」とあいさつすると、大声援と拍手は鳴りやまなかった。バスの出発ぎりぎりまで手を振って応えた柳沢は「みんなが『ガッチリ心をつかまれたよ』と言ってくれて、本当にありがたい。この前の発言は訂正します」と笑顔で感謝の思いを込めた。

 誰からも愛されたストライカーが仙台に残した財産は、必ず今後の発展につなげなければならない。渡辺監督は「ヤナギがもたらしたものを話すと30分はかかる。1人1人が真剣に考えて、彼の功績に報いるためにも来季以降につなげたい」と言った。クラブ側は、14日ユアスタでのチャリティーマッチで引退セレモニーを行う方向で調整している。柳沢は「これからもベガルタのファンであることは変わらない」と約束し、ベガルタゴールドの背番号13のユニホームを脱いだ。【鹿野雄太】