光が見えた。日本代表FW本田圭佑(25=CSKAモスクワ)が一時のスランプ脱出を宣言した。ロシアリーグが中断期間に入り、28日に帰国。日本代表からチームに復帰後5戦連続で先発出場し、ゴールも決めるなど5連勝に貢献。首位を走るチームの原動力となっている。つかの間の休息を取り、目標とするビッグクラブへの移籍という大きな目標に突き進む。

 本田が午前8時半に成田空港に降り立つと、日本代表の大黒柱に気が付いた一般人がざわめき立った。女性から「本田さん」と呼び掛けられるとあいさつを返す。心の余裕がそうさせるのか、口調も穏やかだった。表情も柔らかく笑顔も見せた。「トンネルは抜け出せた。技術もそうだけどメンタルでね」。考えて答えに詰まることもなかった。

 今季序盤はケガもあり欠場することもあった。欧州リーグは決勝トーナメント2回戦で敗退。徐々に調子を上げてはいたが、ゴールは5月25日まで奪えなかった。ロシア杯では優勝を決めるアシスト。結果は出始めていたが納得はしていなかった。5月31日に帰国した際には言葉も少なく険しい表情を浮かべていただけに、この日の本田は別人と思わせるほど冗舌だった。

 上下とも白一色で、真夏のバカンスを思わせるいでたちで通路に現れた。キャメルの靴にイタリア製の紫のサングラスを着用。日本代表としてチェコと戦った翌日8日は、対照的にグレーのスーツでロシアへと出発していた。

 チームに戻ってからは好結果が待っていた。試合前日に合流するも、10日のテレク戦でゴールを決めると、14日のアンジ戦で2戦連発。26日のアムカル戦ではトップ下で先発し先制点をアシストした。「順応できる部分が大きくなった」と話す。スルツキー監督とは意見をぶつけ合っている。「監督とは戦っている」と攻撃的なポジションでのプレーを訴えているという。

 6月は代表も合わせて7試合に出場した。10日から26日までは中3日で5連戦の過密日程。高いレベルでのプレーを続けられたが、現状には満足していない。「もっと上のリーグに挑戦したい」。今季は欧州CLに出場するが、日常の戦いから刺激を求めている。以前よりスペインのRマドリードへの移籍を目標に掲げているだけに視線は先に向けられている。

 来月21日からリーグは再開。軽いトレーニングで体を動かすつもりだ。「またすぐトンネルかもしれないけど、次への序章になると思う」とプレーへの自信と、悲願のビッグクラブ移籍への第1歩ととらえている。本田はさっそうと車に乗り込んだ。【加納慎也】