<セリエA:ACミラン2-0キエボ>◇4日◇ミラノ

 ACミランの日本代表FW本田圭佑(28)が、「悪魔の左足」から約25メートルの直接FK弾を決めた。キエボ戦の後半33分にミラン移籍後、公式戦では初のFK弾をねじ込み2-0での勝利に貢献した。これで開幕から6戦4発。名門でゴールを重ね、確かな地位を手にした背番号10は、今日6日にも帰国し日本代表に合流する。

 本田のFKは鋭く曲がり落ち、GKの手をはじいてネットを揺らした。後半33分。1-0から勝利をグッと引き寄せる今季4点目。右足での開幕弾から頭、左足、そして代名詞ともいえるFK弾。右のFWに位置し、複数の得点パターンを証明中。DFラミらに高々と抱き上げられた背番号10が、聖地と呼ばれるサンシーロの主役になった。

 FWエルシャーラウィが得たFKの位置はゴールやや左。通常、左利きの本田より右利きの選手が蹴ることの多い位置だった。キッカーをめぐりFWメネズともめた。後方にはDFアレックスも控えていたが1歩も引かなかった。「彼(メネズ)も蹴りたそうだった。でも、まあ譲れるところではなかった」。相手GKバルディはイタリア世代別代表の常連で、将来の代表守護神ともいわれる実力者。少し空けたニアサイドを4枚の壁の上から抜かれ、手を振り上げ悔しがった。

 セリエAでの初FK弾には、セットプレー専門のコーチとして今季加わったビオ氏の存在がある。「セットプレーの魔術師」とも言われる61歳の元銀行員。分析力と豊富なアイデアにほれ込み、スタッフに入れた元イタリア代表GKのゼンガ氏(当時ディナモ・ブカレスト監督)が「ビオがコーチにいることは、シーズン20得点を挙げるストライカーがいるようなものだ」とまで言ったスゴ腕。練習場ミラネッロではマンツーマン特訓を続ける。「付きっきりで指導してもらっている部分もあるので、早く決めたい思いもあった」。感謝を結果で表現した。

 チームでトップ、この時点でリーグトップタイの6戦4発。この活躍にガリアーニ副会長の口も滑らかだ。「(昨シーズンは)本田の兄弟がやってきたので、我々は文句を言って本物の本田を送ってもらったのだ(笑い)」。別人のようなプレーぶりをもはや持ちネタ?

 となったジョークまじりに振り返った。

 インザギ監督も「今日も(交代後に)90分プレーをしたいと言ってきた。驚くほどモチベーションが高い」と絶賛した。厳しいカルチョの世界で輝きを放つ日本代表FWは、ゴール量産という実績を手土産に代表に合流する。【波平千種通信員】

 ◆本田の直接FKゴール

 ACミラン移籍後の親善試合を除く公式戦で初。海外1部のリーグ戦ではCSKAモスクワ時代の13年7月のロコモティフ・モスクワ戦以来で、VVV時代を含め通算8点目。Jリーグの名古屋所属時はJ1通算11点のうち3点が直接FK。日本代表ではAマッチ通算23点を挙げているが、直接FKは2点。10年W杯南アフリカ大会のデンマーク戦、13年8月の親善試合ウルグアイ戦で決めている。