女子走り幅跳び(T44=片下腿切断など)は中西麻耶(31=大分県身障者陸協)が自身の持つアジア記録にあと11センチに迫る5メートル40で制した。女子200メートル(T47=片前腕切断など)で辻沙絵(21=日体大)が27秒08の日本新記録で優勝した。

 3度目のパラリンピックで悲願のメダルが現実味を帯びてきた。中西が課題の前半で大ジャンプを連発した。2回目に5メートル29を跳ぶと、続く3回目に自身のアジア記録にあと11センチに迫る5メートル40をマーク。「毎回、前半にファウルを重ねて精神的に追い込まれていたので、今回は前半にきっちり記録を残せるように練習してきました」。向かい風の中での好記録に、本人も納得の笑顔を見せた。

 4月の日本選手権で5メートル51のアジア記録を樹立した。世界記録との差はわずか23センチ。日本女子陸上界で最もメダルに近い存在でもある。その精度をより高めるため、パラリンピック1カ月前の7月にドイツに遠征する決意をした。大会にも出場するが、最大の目的は同じT44の男子の世界記録保持者マルクス・レーム(ドイツ)の直接指導を受けることだ。

 レームは昨年10月の世界選手権で、ロンドン五輪の優勝記録を上回る8メートル40の驚異的な世界新記録を樹立。リオ五輪出場の是非が世界中で注目されている。中西は以前からメールを交換する仲で、「義足の調整のアドバイスをしてもらっていました」という。ただメールでは細かい指導には限界があるため、直接会ってジャンプについても指導を受けるという。

 12年ロンドン大会後から地元大分で指導を受けてきた成迫コーチと6月でコンビを解消した。教員でもある同コーチの仕事が忙しく、指導するのが難しくなったのが理由。現在は同コーチの教えを生かして独自に練習をしている。

 「成迫コーチには今まで本当に無理をしてもらい、感謝しています。何としても教えてもらったことを生かして、リオでメダルを取りたい」。

 中西にとってリオのメダルは、愛情を注いでくれた人たちへの唯一無二の贈り物でもある。