リオデジャネイロ五輪金メダリスト12人が出場した。女子100メートルに10秒78の今季世界最高をマークしたエレイン・トンプソン(24=ジャマイカ)ら、女子は5人全員が優勝した。それに対して7人が出場した男子の金メダリストは6人が敗れ、勝ったのは110メートル障害のオマー・マクレオド(23=ジャマイカ)ただひとり。

 記録的にも、女子では100メートルなど4種目で今季世界最高が出たのに対し、男子の今季世界最高は200メートルでノア・ライルズ(19=米国)がマークした19秒90ただ1つ。金メダリストの勝敗も、記録面でも男女で違いが出た大会だった。

 男子走り幅跳びではリオ五輪金メダリストのジェフ・ヘンダーソン(28=米国)が6位と敗れた。優勝したのはリオで1センチ差の銀メダルだったルフォ・マニョンガ(26=南アフリカ)で、優勝記録の8メートル61は、発足8年目のダイヤモンドリーグで出た記録としては過去最高だった。

 「スピードが出やすいトラックだったので、踏み切り板に合わせるのが難しかった。それで(6回の試技中)3回ファウルをしてしまったけど、今日の記録くらいは跳べる手応えはあった」

 それでも8メートル61は、世界記録の8メートル95に30センチ以上も差がある。これはダイヤモンドリーグがスタートした2010年以降、この種目の低調が続いてきたことを意味している。

 男子400メートル障害も金メダリストのカーロン・クレメント(31=米国)が4位と敗れたが、走り幅跳びと同様に種目自体にスター選手が現れないことが混戦状態となっている一因でもある。また、800メートル金メダリストのデイビッド・ルディシャ(28=ケニア)が4位、110メートル障害のアリエス・メリット(31=米国)が6位と敗れたように、世界記録保持者の力が落ちているケースもあった。

 それに対してリオ五輪女子100メートル&200メートル2冠のトンプソンは、2位のトリ・ボウィー(26=米国)に0・26秒差をつけた。ボウィーもリオ五輪銀メダルの強豪選手。金銀メダリストの対決でここまで差が開くことも珍しい。トンプソンは「準備が上手くできて、それをレースに出すことができました」と満足そうな様子で話した。

 第1戦のドーハ大会(5日)は200メートルで、リオ五輪銀メダルのダフネ・シュキッパーズ(24=オランダ)に上海大会100メートルと同じ0・26秒差をつけた。ともに金銀メダリスト対決を制したわけだが、この2レースはトンプソンにとって冬季トレーニングの確認作業の意味が大きかった。

 「この後はジャマイカに戻って、月末のジャマイカ国際大会を走ります。そこから今シーズンの一連の試合、特に8月のロンドン世界陸上に向けての準備をしていくことになります」

 引退を表明しているウサイン・ボルト(30=ジャマイカ)のラスト世界陸上となるロンドンで、後輩の新女王がどんな花を添えるだろうか。

◆今季の男子走り幅跳び

 昨年はシーズンリストで上位5選手が8メートル58から8メートル42の間にひしめいていた種目だが、今季の8メートル40以上は南アフリカの2選手だけ。上海大会優勝のマニョンガが4月の南アフリカ選手権で跳んだ8m65と、ラシュウォール・サマーイ(25)が同選手権2位になったときの8メートル49である。

 まだシーズンインして日が浅いこともあり、南半球の選手の方がエンジンのかかりが早い。今後、リオ五輪金メダルのヘンダーソンや、銅メダルのグレッグ・ラザフォード(30=英国)もロンドン世界陸上に向けて記録を伸ばしてくるはずだが、上海大会で2位に39センチ差をつけたマニョンガの強さは現時点では抜き出ている。3月にも8メートル60台を跳んでいて、上海では「8メートル80を狙っていた」という。

 マニョンガが久しぶりに、世界記録に挑戦していくジャンパーになりそうだ。