<柔道:グランドスラム東京2012>◇初日◇30日◇東京・代々木第1体育館◇男子60キロ級

 高藤直寿(19=東海大)が、次世代のスター候補に躍り出た。16年リオデジャネイロ五輪を目指す期待の星は、決勝で石川裕紀(24)から肩車で一本を奪い初優勝。高校、大学の先輩でもある日本代表の井上康生新監督(34)に「初陣金メダル」をプレゼントした。

 開始から1分9秒、高藤が石川を担ぎ上げた。そのまま肩車で相手を畳にたたきつけて一本。自分の体が回るのと同時に、右手で思い切りガッツポーズした初々しい19歳は「うれしかった。東京で優勝したいと思っていたし、勝ったことは自信になる」と笑った。

 東海大相模高、東海大と井上新監督の直系の後輩。試合前には「来年から一気に行くんだから、ここから行け」と声をかけられた。「最近、監督が忙しくて話もしていなかったから、うれしかった」。3週前の講道館杯では優勝を期待されながら3位に終わった。「試合に集中できず、何とかなるかなと思っていた」と反省し、名誉挽回を狙って猛アピールした。「気合が入った目をしていた。優勝は評価したい」と井上監督は話した。

 積極的にかける多彩な技で将来性は抜群だが、井上監督は「ピノキオのように鼻が伸びるタイプ」と、精神面の不安を指摘した。それでも、今の高藤に怖いものなどない。「今日ぐらい伸びてもいいかな」と言った後「13年は全部の試合に勝つ。誰も抜けないような勢いで世界選手権で金メダルをとる」と、調子に乗りまくって話した。ロンドンで金メダル0に終わった男子柔道界、リオに向けて頼もしい新星が現れた。【荻島弘一】