柔道五輪3連覇の野村忠宏(40=ミキハウス)が8月31日、大阪市内で引退会見を行った。

 野村は所属先のミキハウス・木村皓一社長(70)との秘話も明かした。3連覇を達成した04年アテネ五輪後の07年に右膝前十字靱帯(じんたい)を断裂し、08年北京に出られず、12年ロンドン五輪を目指していたとき、木村社長から「手術してしっかり治しなさい。野村くんの挑戦には夢がある。もう1回頑張りなさい」と励まされたことを明かし「うれしかった」と振り返った。

 会見終了後、花束を手渡して野村を慰労した木村社長も、数々の思い出話を披露した。「ものすごく強い時と、弱い時を知ってます。野村くんは、シドニー五輪に行く前に『全部一本で勝ってきます。全部違う技で勝ってきます』と言ってきた。僕は『そんな一本じゃなくて有効か技ありでいいから、金を取ってきて』と言ったんです。そしたら、決勝戦は組んだ瞬間に投げて。野村くんのお父さんと『これから始まりますね』と話してたから、僕は一本見てませんねん。それくらい強かった」と、全盛期の最強ぶりを振り返った。

 今後について、木村社長は「できる限り、小中学生や小さい子供たちに夢を与え続けてくれたらいいなと思ってます」と、“指導者・野村忠宏”に期待する。ミキハウスは柔道教室を開いており、300人近い子供が稽古に励んでいるという。木村社長は「野村くんは若手の育成をやりたいと思うから。目標をなくした子供たちへ、講演活動もやってほしい」と話した。