レスリングのヤリギン国際大会でまさかの黒星を喫した女子58キロ級世界女王の伊調馨(31=ALSOK)が1日、大会が行われたロシアから帰国した。

 02年の釜山アジア大会以来14年ぶりに獲得したシニアでは2個目の銀メダルを胸に「メダルには特にこだわりはない。悔しいというより、情けない、ふがいないという気持ちです」と話した。

 07年アジア選手権の不戦敗を除けば、戦って敗れたのは13年ぶり。「結果は残念だけれど、いい勉強になった」と、モンゴルのプレブドルジとの決勝を振り返った。出迎えたALSOKの大橋監督は「まあ、負ける時はあんなもの。五輪じゃなくて、よかった」と淡々と話した。

 4連覇を目指すリオデジャネイロ五輪に向けてスタイルの変更に取り組んでいる。距離をとり、技に入る前の動きで相手を崩す高度な技術だ。「うまくいかずに、悩んでいた。そのまま試合に出た自分の姿勢が悪かった。準備不足です」と反省の言葉が口をついた。初戦から不安は的中した。2回戦ではロシア選手相手に2年ぶりの失点。チームを率いた成富監督も「いつもの圧倒的に強い伊調ではなかった」と話した。

 決勝戦では首を痛めて、腕がしびれた。審判の判定も微妙だった。しかし、その程度のハンディはいつものこと。試合中に本来のスタイルに戻せば逆転勝ちも可能だったはずだが「負けてもいいから、こだわってやってきたことを貫きたかった」と振り返った。

 技に入る前の駆け引きを重視する男子レベルのレスリングは「リオに間に合うかどうか分からない」と話す。「内容にこだわってやっていきたい。メダルにこだわりはない」と話す一方で「リオでは勝ちにこだわりたい」とも話した。結果を求めて五輪3連覇、世界選手権10回優勝の本来の形で妥協するか、より進化させた高度なレスリングで挑むのか-。女子史上初の五輪4連覇がかかる58キロ級が行われるのは8月17日、あと198日だ。