日本選手権初のシンクロ男子、現る。ジョイフルアスレティッククラブ(茨城)所属の中学1年生、佐藤陽太郎(12)が非五輪種目のフリーコンビネーションに出場した。混合デュエットを行わない同選手権のシンクロ部門では60回の歴史で初の男子出場となった。日本水連は、15年世界選手権で混合デュエットが正式種目になったことで男子の強化に着手。日本代表の井村雅代ヘッドコーチ(66)も佐藤陽の出場に「大歓迎」ともろ手を挙げて賛成した。

 きびきびと入場する一団の中に、男子がいた。水着はパンツだけで上半身は裸。短い髪はゼラチンで固める必要もない。12歳の佐藤陽が、1957年に始まり、今年で60回目(11年は中止)の歴史を誇る日本選手権のシンクロ部門で初の男子選手になった。プールに入れば、8人の女子に交じっても違和感はない。中高生だけのチームは最下位の10位だったが「泳ぎ終わって楽しかったなと思います」とぷくっとした顔で笑った。

 茨城県つくば市生まれ。2歳で水泳教室に入った。5歳の時、3歳年上の姉友花(ともか)を教えるコーチからシンクロに誘われた。「最初は『え、なにそれ』と思った。恥ずかしいな」。だが水中で踊ることが楽しく、始めて2年で違和感もなくなった。現在は週5日、女子と練習。シンクロ歴7年で「これから大きな大会に出たいです」。

 国際水連は、15年世界選手権から男女1人ずつの混合デュエットを正式種目とした。日本水連も14年秋から初心者講習会や合同練習会を開催。日本選手権は昨年から男子に門戸を開き、佐藤陽が第1号となった。男子の選手登録数は10人程度だが、本間シンクロ委員長は「国際水連が混合デュエットを五輪種目に推薦した、という話もある。強化していきたい」と言った。

 「メダル請負人」も佐藤陽の出場を歓迎した。井村ヘッドコーチは「大いに賛成。スポーツは皆のもの。男性、女性関係なく。それがスポーツの良さ。1人だけじゃなく、複数が出れば、パッと増える」。たこ焼きが好物という男子の出現がシンクロ界を変えるかもしれない。【益田一弘】

 ◆佐藤陽太郎(さとう・ようたろう)2004年(平16)8月10日、茨城県つくば市生まれ。5歳で競技を始める。今春につくば市立柳橋小学校を卒業し、同谷田部中学校に入学。姉友花も同じジョイフルアスレティッククラブに所属。家族は両親と姉。157センチ、47キロ。

 ◆フリーコンビネーション 非五輪種目。制限時間4分30秒で8~10人で行う。ソロ、デュエット、トリオ、グループを自由に組み合わせて演技する。3人未満と8~10人のパートを最低2回ずつ含む。世界選手権は03年から、日本選手権は06年からスタートした。