陸上男子ハンマー投げの室伏広治(34=ミズノ)が、薬物違反の根絶へ取り組んでいく姿勢を示した。国際オリンピック委員会(IOC)が北京五輪2、3位の選手のドーピング違反での失格を決め、繰り上がりの銅メダルが確定。12日に愛知・豊田市の中京大で会見し、薬物問題はスポーツ界全体の問題だと警鐘を鳴らした。さらに、国際陸連アスリート委員会の委員として、薬物の撲滅に動くことも明らかにした。

 笑顔は見せたが、腹の底からは笑えない。2位のワジム・デビャトフスキーと3位のイワン・チホン(ともにベラルーシ)の禁止薬物使用による失格で、室伏が5位から銅メダルに繰り上がった。11日午後10時すぎに、日本オリンピック委員会(JOC)から連絡を受けた。IOCが規律委員会などで審議を進めた結果、競技があった8月17日から116日もたっていた。

 「2大会連続のメダルは、非常に名誉なこと。ただ、薬物違反があったことはさみしい。一緒に競技をしていた仲間ということもあり、残念です」。日本陸上界の連続メダルは3人目で、投てきでは初。しかし、喜びと同時に、友人として付き合い、来日すれば食事やカラオケに行くほどの選手に裏切られたショックを、言葉に表した。

 4年前のアテネ五輪も1位の選手が失格となり、繰り上げの金メダル。前回は競技場で君が代を聴けず、今回は表彰台に立つ機会さえ奪われた。ドーピングの根は深い。「スポーツ界全体として取り組まないといけない。ハンマー投げだけの問題としてとらえてほしくない」とも言った。

 選手で構成される国際陸連アスリート委員会では投てき部門を束ねる委員を務めている。「どのようにして若い選手に薬物に頼らなくても成績を残せるということを教えられるか。その方法はあるので、アスリート委員会でどう示していくか、取り組まないといけない」。ロンドン五輪へは、大好きなハンマー投げを汚されたくないという思いとともに、歩んでいくことになる。【佐々木一郎】