<全国高校駅伝・静岡県大会>◇7日◇エコパスタジアム発着◇女子5区間(21・0975キロ)

 駅伝はゴールするまで分からない。女子の部の最終5区(5キロ)で大逆転劇が起こった。三島北のアンカー坂本美咲主将(3年)が2位でたすきを受け取ると、42秒差で独走していた常葉学園菊川・市川涼香(3年)を残り100メートルで追い抜き、2年連続4度目の優勝を決めた。同校は全国大会(12月20日=京都)に、上位6校は東海大会(三重)に出場する。

 エコパスタジアムがどよめいた。3コーナー付近のゲートから独走で飛び込んでくるはずの常葉菊川・市川の10メートル後方に三島北・坂本がいた。ゴールまで残り250メートルの衝撃。必死にスパートする市川。上回るようにスピードを上げる坂本。4コーナーで体を合わせると並ぶまもなく、坂本が抜き去った。残り100メートルは切っていた。突き抜けた坂本は、右手で2連覇の「V」、左手で部員が合言葉とする「ポジティブ」のサインを示しゴールテープを切った。

 区間3位17分36秒の市川がブレーキをかけたわけではない。アップダウンのある小笠山総合運動公園内の周回コースで、5000メートルの自己ベスト16分47秒の坂本が区間記録タイの16分50秒で駆け抜けた。数字には表れない“自己新”の快走だった。

 レースは常葉菊川が1区から飛び出し、じわじわ差を広げた。4区から5区の中継点では42秒差。リレーの直前、絶体絶命の小林一幸監督(46)は坂本に指示した。「1キロ8秒ずつつめれば何とかなる。行け!」。指示通りでも2秒足りない状況だが、坂本は冷静だった。「6、7秒ずつつめれば何とかなるかな!」。予選落ちしたものの全国総体には1500メートルで出場していた。スパートには自信があるだけに、最後にもつれる展開になれば勝機が見えてくる。そう信じて最初から飛ばし、計算通りスタジアムでとらえた。

 小林監督は「優勝しないと意味がないので、飛ばしすぎてつぶれても仕方ないつもりで指示した。坂本に尽きますが、ほかの選手が1秒ずつ頑張ったからこそ逆転できたと思いたい。そして、常葉菊川が引っ張ってくれたからこそ好記録になった。常葉にも感謝します」と話した。

 昨年は1、2年生中心のチームで都大路にコマを進めたが、記念大会で出場数が多かったこともあり42位に沈んだ。坂本は「インターハイでも全国を経験できた。今年は上位に入りたい」。そう話し、5人でつないだたすきを握り直すと「汗でだいぶ重くなっちゃいましたね」と笑った。大逆転優勝の重みだった。【久我悟】