<陸上:関東学生対校選手権>◇最終日◇23日◇東京・国立競技場

 男子5000メートルで無名の藤本拓(3年=国士舘大)が東洋大の「山の神」柏原竜二ら、並みいる箱根ランナーを破って初優勝した。雨中の一戦だったが、伸びのある走りで上位をキープし、ラスト1周で逆転して13分38秒68の自己ベストで制した。高校時代の実績もなく、大学入学後も故障続きだったが、やっと才能が開花。来年の箱根駅伝で期待の新星になる。

 藤本の前はスター選手だらけだった。「山の神」の柏原、今大会1万メートル王者のケニア人留学生ベンジャミン(日大)、10年の箱根駅伝2区で日本人最上位の村沢(東海大)が順々に先頭に立った。だが勝負を制したのは無名の藤本。ラスト1周でストライドの大きい走りで村沢を振り切り、自己ベストを約19秒も更新して優勝した。

 「場違いみたい」と目を丸くした。試合後、村沢から「(今後の)1万メートルでは負けません」と声をかけられ「ちょっと怖い。柏原?

 雲の上の存在」と年下にビビった。無理もない。高校、大学と実績は皆無。4日前まで腰痛で欠場も考えたが、99年の5000メートル覇者で今春から就任した小川コーチから体のケアに対する指導もあり、出場にこぎつけた。

 「山の神」から力をもらった。1週間前、東京・高尾山に同級生の西尾と出掛けた。「パワースポットだから」。西尾は今大会ハーフマラソンで自己ベスト、自らは打倒柏原を果たし、パワーを実証?

 した。

 2年ぶりに箱根駅伝出場を目指す国士舘大のキーマンになる。「みんなで行きたいけど…。でも今は生きることに精いっぱい」。どこまでも弱気だったが、来年の箱根でサプライズを起こす男になるかもしれない。【広重竜太郎】

 ◆藤本拓(ふじもと・たく)1989年(平元)9月11日、山口県徳山市(現周南市)生まれ。小6の時に友人に誘われて陸上を始める。高水高では2年時に福岡クロカン大会(4キロ)で優勝するも、総体出場以外は全国大会で目立った成績はなし。1万メートルの自己ベストは28分44秒88。20キロは練習でも経験なし。家族は両親と弟2人。ニックネームはフジモン。166センチ、53キロ。