<大相撲夏場所>◇千秋楽◇20日◇東京・両国国技館

 被災地に明るいニュースを届けたい-。序二段の巨東(おおあずま、22=玉ノ井)の、そんな思いがかなった。7戦全勝同士で迎えた聡ノ富士との優勝決定戦を、行司差し違えの寄り切りで制した。うっちゃられる形で土俵下に落ちたが、相手の右足が完全に先に出ていた。「自分では負けたと思いました。相手の足が出たのは見えなかったし」と観念していただけに喜びもひとしおだ。

 二重の喜びは、故郷の福島・富岡町に朗報を届けられたこと。原発から20キロ圏内の警戒区域にあり、両親と兄は昨年、新潟に避難した後、今は福島・郡山市内の仮設住宅で暮らしている。前日、電話をしたところ「『全勝じゃん、と言われました。意外と軽かったですね」と笑う一方で「地元の力士が優勝したということで明るいニュースになればいいと思いますね」と少しばかり神妙な表情で話した。