相撲界の改革を目指し、日本相撲協会理事選に立候補する貴乃花親方(37=元横綱)が、一門を超えた「共闘」を呼びかけた。同親方と支持派の親方6人が二所ノ関一門から事実上の「破門」となってから一夜明けた20日、東京・中野区の貴乃花部屋で会見。同一門との決別を宣言し、他の一門に所属する同世代の親方衆に支持を訴え、勢力拡大に本格的に乗り出した。一方、武蔵川理事長(61=元横綱三重ノ海)は貴乃花派の動きに初めて不快感をあらわに。一連の騒動は、新旧世代の全面戦争の様相を呈してきた。

 しがらみに区切りをつけて、新たな1歩を踏み出した。二所ノ関一門から受けた事実上の破門宣告に、貴乃花親方は「ちょっと寂しい気持ち」とつぶやいた。決別の事実を受け止めると、同世代の親方衆に向けて一門の垣根を越えた「共闘」を呼び掛けた。

 貴乃花親方

 一門という枠組みは現存するものですし、当然ないがしろにしてはいけないです。ただ、私と同世代の40歳前後の方には、そういう枠を超えて良くしていこうとしておられる方が多くいらっしゃる。協会の発展に役に立ちたいと。

 前日19日の緊急一門会は欠席した。夜には、途中退席した間垣親方(元横綱2代目若乃花)ら一緒に「破門」された6親方と合流。「熱いといいますか…ちょっとみなさん疲れ気味で」と笑うが、2~3時間、今後について語り合い、きずなを確かめ合った。「貴乃花一門」の旗揚げこそ否定したが、ほかの一門にも支持者がいることは、理解している。自信満々の表情で「二所ノ関一門の大先輩が築いてきた改革精神を広げていきたい思いです」と所信表明した。

 大嶽親方(元関脇貴闘力)が力を込めて言う。「一門にこだわるのは、我々は違うと思う。ほかの一門からも大歓迎です。言い出せない方も多いでしょうけど」。協会関係者は「貴乃花の考えに共感している親方はいっぱいいる」と明かす。どの一門にもシンパがいるといわれるだけに、熱きメッセージで、追随する親方が出てくるかもしれない。

 2月1日の理事選まで、時間はない。現状の「貴乃花グループ」は7票。当選ラインといわれる10票には届いていない。それでも貴乃花親方には「勝算とかは考えていない。子どもたちに相撲をもっと愛してほしい」という使命感がある。「1人の人間は強くないけど、みんなの意思統一があれば、新しいものが生まれるのでは」。ちょうど7年前のこの日、現役引退を発表した。「貴乃花親方」が誕生した1月20日、因縁を感じさせる新たな船出になった。【近間康隆】