横綱朝青龍(29=高砂)が力士生命の危機を迎えた。初場所中の「泥酔暴行騒動」で被害を受けた男性が警視庁麻布署に被害相談に訪れていたことが28日、分かった。この日の日本相撲協会理事会でも、騒動は解決済みとしていた師匠の高砂親方(元大関朝潮)が、男性側と示談が成立していないことを認めた。もし示談不成立となれば、立件もあり得る事態となった。また、日本相撲協会は高砂親方に対し、事実関係の再調査を指示。調査の内容次第では、朝青龍にあらためて重い処分が下る可能性も出てきた。

 数々のスキャンダルを乗り越えてきた朝青龍が、窮地に追い込まれた。この日、初場所中の「泥酔暴行騒動」で暴力を振るわれた男性が警視庁麻布署に被害相談に訪れていたことが判明した。麻布署は今後、男性から傷害や暴行容疑などで正式な被害届が提出された場合、朝青龍からも事情を聴く方針だ。

 騒動の直後、先代高砂親方(元小結富士錦)の次男でマネジャーの一宮章広氏(31)が被害者として名乗り出た。だが、28日発売の週刊誌「週刊新潮」が被害者は別の男性で、鼻骨骨折、頭部打撲など全治1カ月のケガを負ったとの記事を掲載。これを受け、27日に高砂親方は被害者は別人だったことを認めたうえで、「終わった話」と、示談の方向で解決済みだとほのめかしていた。

 しかし、この日の日本相撲協会理事会では、元警視総監の吉野準・外部監事(75)が、師匠の高砂親方に示談書の存在を質問。同親方は「示談に向けて動いている」と示談が成立していないことを認めた。示談が成立せず、被害届が出される恐れを残しており、今後の被害者、警察の動向次第では、問題がさらに広がる可能性もある。

 一方、日本相撲協会としても、高砂親方に事実関係の再調査を命じ、早急に理事会で報告するように通達した。吉野・外部監事は「事実関係の調査結果次第では処分が必要。(すでに受けた)厳重注意は処分とはいえない」と元警視総監らしく、事実の徹底解明を求めた。

 理事会の席上で「しっかりしてもらわないと困る」と高砂親方を叱責(しっせき)したという武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)は「師匠が事情を全部調べて、その報告を聞いてから」と厳しい表情を浮かべた。広報部長の九重親方(元横綱千代の富士)も「ちゃんと調べてからだよ。今はその段階」と言葉少な。調査結果次第では厳しい再処分は必至の情勢だ。

 そもそも、場所中に酒に酔って知人に暴行し、警察ざたになったことだけでも大問題。うやむやに終わらせては、協会の責任も問われる。横綱審議委員からはたとえ示談となっても、引退勧告を含めた厳しい処分を求める声が強い。理事会後、高砂親方はあらためて「示談の方向で話は向かっている」と早期解決の見通しを示したが、示談成立なら一件落着、で終わりそうもない。新年早々の「泥酔暴行騒動」の行方は混沌(こんとん)としてきた。