<大相撲九州場所>◇13日目◇26日◇福岡国際センター

 横綱白鵬(25=宮城野)が綱の意地を見せた。大関魁皇(38)との1敗対決を寄り切りで制して12勝目。05年の朝青龍と並ぶ年間84勝目となった。今場所の獲得懸賞も431本となり、1場所の本数記録を更新。この日来日した父ムンフバトさん(69)がモンゴル相撲で持つ「5連覇」へ、1歩近づいた。平幕の豊ノ島(27)も1敗をキープ。魁皇と大関把瑠都(26)が1差で追う。

 完全アウェーが、白鵬の闘志を奮い立たせた。館内を包むのは、好調大関への魁皇コール。敗者は賜杯レースから後退する1敗対決で、横綱は心を決めた。

 白鵬

 攻めていこうという気持ちだけ。大関陣が調子いいし、より一層、気を引き締めていこう。そんな気持ちが強かったですね。

 同じ立浪一門の先輩は、入門時すでに大関だった。魁皇の右上手の怖さは、分かっている。得意の左上手を狙わず、まずは突き放した。「じっくり攻めようと。それだけ」。土俵中央で右四つで組み合う。魁皇が右下手を引いて体を寄せた瞬間、左上手をつかんだ。休まず上手をグイッと引き付け、腰を落とし、盤石に寄って出た。

 「横綱のノルマ」という12勝目に到達した。08年名古屋場所からの連続12勝以上は、15場所に更新。年間勝利は05年朝青龍に並ぶ84勝目になった。また、この日の懸賞41本で、今場所の獲得懸賞は431本。秋場所マークした場所最多記録429本を塗り替えた。

 博多は思い出の地だ。4年前の九州場所、白鵬は左足親指を剥離(はくり)骨折し、初めて全休した。入院した病院は、会場の福岡国際センターから徒歩5分ほど。「土俵」は近くて遠かった。

 白鵬

 それまで相撲を取るのが大変だと思っていた。でも、相撲を取れないほうが大変だと気づいた。土俵に立てることがどんなに恵まれているか。初めて見つめ直すことができた。あの時があるから今がある。

 あの時、病室で励ましてくれた父ムンフバトさんは、この日モンゴルから来日した。今日27日には母タミルさんや姉バドゥグレルさんも福岡入りする予定。父がモンゴル相撲で記録した「5連覇」に末っ子が並ぶことを周囲も待つ。ここ数日は泳ぎがちだった目も、険しくなった。「疲れているのかな?

 優勝争いというか、今場所はね」。連勝が63で止まった記録場所。白鵬の視線には、逃すことは許されない賜杯が見えてきた。【近間康隆】