日本相撲協会は1日、福岡市内で大相撲初場所(来年1月9日初日、東京・両国国技館)の番付編成会議を開き、鳰の湖(におのうみ、23=北の湖)と富士東(23=玉ノ井)の新十両昇進を発表した。

 今にも泣きだしそうな表情で、鳰の湖は師匠の北の湖親方(元横綱)と握手を交わし、頭を下げた。九州場所は西幕下4枚目で5勝2敗。十両昇進は確実だった。それでも福岡市内での会見で「すごくうれしいです。病気で相撲をできない時期があったので」と、初土俵から8年半余りでつかんだ地位をかみしめた。

 06年春場所後に小脳炎を患った。約1カ月の入院生活中は寝たきり。「植物のような状態で記憶はない」(鳰の湖)という。点滴、流動食で栄養を補給しても体重は20キロも落ち、歩くこともできない。下半身不随になる可能性が50%もあった。力士どころか日常生活も危うかった。「母には相撲をやめるように言われたけど、どうしても続けたかった」。気力は衰えず、発病から2カ月後には、しこなどでけいこを再開した。

 174センチの小兵で、体の小さな入門希望者による第2新弟子検査合格者では豊ノ島、磋牙司、益荒海に次ぐ4人目の関取となった。九州場所中に、幕内で14勝した豊ノ島に「おめでとう」と励まされた。その豊ノ島の活躍が刺激になった。かつては「はとのうみ」と呼び上げられたこともあったが「もっと上を目指したい」と、故郷滋賀の琵琶湖の古称でもあるしこ名を浸透させるつもりだ。【高田文太】