大相撲の元大関把瑠都(28=尾上)が引退の意思を固めたことが10日、分かった。すでに師匠の尾上親方(元小結浜ノ嶋)が一部の関係者に意向を伝えた。把瑠都の有力後援者は「引退と聞いたが、非常に残念。ケガさえしっかり治せば、まだまだ戦えると期待していたのに」と明かした。

 把瑠都は2日の番付発表後、1度も稽古場に姿を見せていない。尾上親方は先月下旬のジャカルタ巡業中、「今回は中途半端な状況で復帰せずに、左膝をしっかり治してからにしようと話した」と、番付にこだわらず、慎重に復帰の時期を見据える意向だった。だが、帰国後は「今後のことは分からない」と状況の変化を示していた。

 夏場所7日目の稀勢の里戦で、致命傷を負った。寄り倒された際に持病の左膝を悪化させ「前十字靱帯(じんたい)および半月板損傷」と診断された。名古屋場所前は、すり足やてっぽうができるまでに回復したが、現在もそれ以上の負荷はかけられていない。

 大関時代の昨年秋場所は右足親指剥離骨折、翌九州場所も左太もも裏肉離れ。いずれも途中休場で2場所連続で負け越し、大関から陥落した。秋場所(15日初日、両国国技館)は東十両3枚目で、全休なら幕下降格が確実。大関経験者が幕下で相撲を取ったことは過去1度もなく、決断を迫られていた。

 昨年初場所で初優勝し、欧州初の横綱をつかみかけた「エストニアの怪人」。ケガという難敵には、かなわなかった。