<大相撲名古屋場所>◇11日目◇23日◇愛知県体育館

 関脇豪栄道(28=境川)が、唯一全勝だった横綱白鵬(29)を2場所続けて破った。攻め続けて、最後は浴びせ倒しで、前日の鶴竜戦に続いて横綱を撃破した。大関昇進への強い思いが奮闘の原動力。2敗を守り、混戦になった優勝争いに参戦してきた。

 座布団が、館内に乱れ飛んだ。最強横綱が珍しく背中から土俵に落ち、満員の観衆の興奮は収まらない。「あの光景は何回見てもいい」。2場所続けて全勝の白鵬を破り、豪栄道がまたも小鼻を膨らませた。

 張り手も恐れず、立ち合いから押し込んだ。横綱優位の右四つがっぷりの体勢になっても、動いて揺さぶった。最後は、場所前に痛めた左足首に力を入れ、左手は相手の右太ももに掛ける。バランスを崩した横綱に、右腕にも力を込めて浴びせ倒した。「必死でした。何されてもいいと、思い切り行った。しっかり当たり勝って、いい相撲で勝ったと思います」。会心の内容に、力強くうなずいた。

 稽古量はもちろんだが、相撲への探究心も人一倍ある。スマートフォンで繰り返し見る昔の映像で、お気に入りなのが、昭和30年代の横綱初代若乃花と栃錦だ。「後手になっても土俵際で踏ん張って残すんですよ。こういうのは憧れる。あと、すごいのは投げの打ち方。肩を相手の体の上に押しつけて、グッと投げる感じ」。往年の横綱の技を頭に詰め込み、同時に勝利への執着心も備えてきた。

 横綱昇進後の白鵬に、2場所連続で勝った関脇以下の力士は日馬富士、稀勢の里、琴奨菊、鶴竜の4人で、すべて大関以上へ昇進している。昇進には直近3場所33勝が目安。春場所で12勝も夏の8勝止まりが響く現状も、勝ち続ければ希望も出てくる。1差で優勝争いに加わり、今日12日目は日馬富士戦。関脇以下で3日連続横綱撃破なら史上初だ。「先のことは考えず、とりあえず明日」。まずは目の前の敵を倒すことに専念する。【木村有三】

 ◆白鵬戦連続勝利

 横綱昇進(07年名古屋場所)後の白鵬に、2場所以上連続で勝った関脇以下の力士は4人。安馬(現日馬富士)は07年秋から3場所連続で、稀勢の里は10年九州と11年初場所、琴奨菊は11年名古屋と秋場所、鶴竜は12年初と春場所で勝利。琴奨菊と鶴竜は2場所連続勝利後に、大関昇進している。

 ◆1場所で3横綱を倒した関脇以下力士

 優勝制度が確立した1909年(明42)夏場所以降、8人(12回)。最近では84年春場所の関脇大乃国が4日目に千代の富士、5日目に隆の里、8日目に北の湖に勝利。ただし、3日連続で横綱を倒した関脇以下力士はいない。