新大関豪栄道(28=境川)が誕生した。日本相撲協会は30日、名古屋市内で秋場所(9月14日初日、両国国技館)の番付編成会議と臨時理事会を開き、関脇豪栄道の大関昇進を満場一致で決定。愛知・扶桑町の境川部屋で行われた伝達式で、豪栄道は「大和魂を貫いてまいります」と、大声で口上を述べた。

 予告通りの男らしい口上だった。出来山理事(元関脇出羽の花)と大鳴戸親方(元大関出島)を使者に迎えた伝達式。豪栄道は、大きな声ではっきり言った。

 「謹んでお受け致します。これからも大和魂を貫いてまいります。本日は誠にありがとうございました」。師匠の境川親方(元小結両国)、おかみさんの美奈子さん(51)と一緒に考え、10回以上練習した口上を堂々と述べた。

 短い言葉に心意気が詰まっていた。「大和魂」を選んだ理由を「日本人の我慢強さや潔さなど、いろんな意味がこもってる」と説明。その魂こそ、豪栄道の相撲道を支える礎だ。

 名古屋場所は左足首と膝痛に襲われながら症状を口にせず、12勝して急転直下の昇進を呼び込んだ。厳しい師匠に「痛いのを耐えるのが男の美学だけど、こいつのど根性をあらためて見直した」と言わしめるほど、我慢強い。夏場所の鶴竜戦でまげつかみの反則負けとされても、言い訳はしなかった。「自分が弱いから、受け入れるしかない。強い人間はどんな時でも勝つんで」と潔さも併せ持つ。

 大阪出身では44年ぶりの大関。モンゴル人3横綱が上にいる現状も大和魂を刺激する。北の湖理事長(元横綱)は「食い込んでいってほしい。大関は通過点として横綱を目指してやってもらいたい」と期待をかける。「横綱だけじゃなく、やるからには誰にも負けたくない」と豪栄道。次の目標を問われると「優勝です」と即答した。精進を続け、角界の頂点への道を進んでいく。【木村有三】

 ◆大阪生まれの大関

 70年秋場所で昇進した前の山以来44年ぶり、昭和以降では2人目。前の山は、北河内郡庭窪村(現守口市)生まれで大関在位10場所、優勝はなかった。大阪生まれの横綱は、17年(大6)夏場所に昇進した第26代大錦だけ。優勝制度が確立した1909年夏場所以降で、大阪出身の幕内優勝者は大錦(17年初、20年初、夏、21年初、22年夏)と山錦(30年夏)だけで、49年夏の15日制定着後はいない。<大関昇進時の口上>

 ◆シンプル四字熟語

 一番多いのが「一生懸命」。初代貴ノ花に始まり、北の湖、若三杉(2代目若乃花)、千代の富士や朝潮、霧島、朝青龍ら。武双山は「正々堂々」、栃東は「努力精進」。

 ◆難解な四字熟語

 変わったのは貴ノ花(貴乃花)の「不撓不屈(ふとうふくつ)」から。若ノ花(3代目若乃花)の「一意専心」、貴ノ浪の「勇往邁進(まいしん)」と続いた。白鵬と日馬富士は「全身全霊」、琴光喜は「力戦奮闘」、琴奨菊は「万里一空」。

 ◆個性的

 病気がちな隆の里は「健康管理に努め…」、武蔵丸は「日本の心を持って…」、出島は「力のもののふを目指し…」と述べた。鶴竜は「お客さまに喜んでもらえるよう…」。初代若乃花は「ありがたくお受けします」、大鵬は「喜んでお受けします」だった。