初場所後の一夜明け会見で審判部批判や「肌の色」という差別を連想させる発言をし、1月31日夜のバラエティー生番組内で謝罪した横綱白鵬(29=宮城野)が“身内”から注意を受けた。東京・両国国技館で1日、主催する少年相撲大会「白鵬杯」に出席。その席で後援者から、謝罪の仕方をダメ出しされたという。大会の会見は開いたものの、批判発言に関する質問は「NG」と通達されるなど、ピリピリムードが漂った。

 もう話すことはない-。その意思の表れなのだろうか。白鵬は大会の会見を終えて花道を引き揚げる際、前夜のテレビ番組内での謝罪について聞かれた。すると、右手人さし指を口に当てて「シーッ」のポーズ。口を開くことはなかった。

 前夜、テレビ朝日系列のバラエティー番組「SmaSTATION!!」に生出演した。番組の冒頭で33回目の優勝の喜びを話した後、騒動について初めて言及。「場所後の件ですが、多くの人々にご迷惑を掛け、また心配を掛け、おわびしたいです。そして、これからも頑張っていきたいと思います。相撲道発展のために」と謝罪した。ただ、騒ぎとなったことに頭を下げたものの、発言の真意などに触れることはなかった。

 それから12時間後。両国国技館内に用意された会見場にはテレビカメラ7台、約50人の報道陣が集まった。だが、直前に白鵬サイドから「会見では騒動の件は質問しないでほしい」と通達がなされた。テレビカメラの前では大会の話に終始し、笑みもこぼした。その会見場を離れると、一転して口を閉ざした。

 実は会見前、大会に駆け付けた有力後援者からダメ出しを受けていた。関係者によると横綱は、前夜のテレビ番組内での謝罪について「あんな形ではダメ」と諭されたという。別の後援者も「テレビの中でなく、会見などで1度、きちんと謝れば済む話。言葉も足りない」と苦言を呈した。

 相撲から離れたバラエティー番組内で、視聴者に向けられた初めての謝罪。もちろん、その前に、批判した相手の審判部や相撲協会に、横綱自身が謝罪していれば何も問題はない。だが、審判部長の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は番組を見ていないとし「連絡は受けていない」と話した。別の審判部の親方は「何に謝ったのか。根本が違っている」と厳しかった。

 周囲の話によれば、番組内で謝罪することで、騒動の幕引きを図りたかった様子。だが、中途半端な対応がかえって、問題を長引かせている。【今村健人】

 ◆白鵬の発言騒動

 初場所千秋楽翌日の1月26日の一夜明け会見で、自ら「疑惑の相撲が1つあるんですよね」と切り出し「帰ってビデオを見た。子供が見ても分かる相撲」と取り直しに疑義。「もう少し緊張感を持ってやってもらいたい。ビデオ判定も元お相撲さんでしょう」と注文をつけた。さらに「肌の色は関係ないんですよ。この土俵に上がって、まげ結ってるのは日本の魂を持った、みんな同じ人間です」と続けた。

 これに、北の湖理事長(元横綱)は「難しい判定。簡単なものじゃない」とバッサリ。横審の内山委員長(当時)も「反省すべきは横綱本人」と厳しく断罪。翌27日に師匠の宮城野親方(元前頭竹葉山)が、北の湖理事長と伊勢ケ浜審判部長(元横綱旭富士)に謝罪して厳重注意を受けた。ただ、横綱本人は問いかけにも無言を貫き続け、31日夜に生出演したバラエティー番組内で初めて謝罪した。