巨人坂本勇の打撃が下降気配となる時には、打撃フォームに予兆が見られる。右膝の折れが大きくなって、それに同調して右肩が下がり、バットのヘッドが落ちてしまう点だ。これによってバット軌道が波打つような形になり、ボールとの接点が通常より少なくなってしまう。自分の現役時代、坂本勇の調子の良しあしを見るポイントはここだった。

この試合では、この傾向が見受けられた。2回1死二、三塁での第2打席。スライダーと直球を外角に集められ、フルカウントから低めのスライダーに空振り三振。最後の1球は明らかに右肩が下がり、変化についていけていなかった。

伏線は阪神青柳との対戦成績もあっただろう。この試合前までで通算15打数2安打。先頭の第3打席での初球打ち(内角高めを投ゴロ)が顕著で、苦手意識を拭うために、いつもよりも打ち気が強く感じた。坂本勇の怖さの1つである外角変化球を“反応で拾う”長所は、フォームを崩すリスクと紙一重。打ち気という精神面のちょっとした変化が、第2打席のような結果を招く。

逆にバッテリー目線で言えば、いかにこういう状態に持ち込めるかが、坂本勇攻略のカギになる。この試合のように、まず外角への意識をより強めさせる。そして得意の内角への反応を少しでも遅らせて窮屈にする。過去の対戦成績を配球に加味することも、もちろん必要だ。

自分の現役時代は坂本勇に打たれている印象が強い(実際の谷繁氏マスク時の被打率は通算2割5分1厘)。年々技術、配球を読む力が向上し、勝負強さも備わっていた。今は当時よりも修正能力も上がっていて、不調時のフォームの課題も、当然認識しているはずだ。開幕からの連続出塁は止まったが、巨人打線の軸であることは変わらない。坂本勇を止められれば、この日のような展開に持ち込める可能性は高くなる。(日刊スポーツ評論家)

巨人対阪神 9回裏巨人2死、二飛に倒れ敗れた坂本勇(手前)は連続出塁記録も止まり悔しそうな表情で引き揚げる(撮影・垰建太)
巨人対阪神 9回裏巨人2死、二飛に倒れ敗れた坂本勇(手前)は連続出塁記録も止まり悔しそうな表情で引き揚げる(撮影・垰建太)