苦境の時こそ、ベンチが動け-。日刊スポーツ評論家の中西清起氏(57)が6回の好機を生かせなかったベンチワークに疑問を投げかけた。今季最長の22イニング無得点で2試合連続完封負け。「苦しい時こそ、ベンチが重圧をかけるべき」と提言した。【取材・構成=田口真一郎】

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6回表の攻防が試合の流れを決めた。2死二、三塁で高山が四球を選ぶと、ラミレス監督は上茶谷から左腕石田にスイッチ。一方の阪神は8番木浪がそのまま左打席に入った。2点を追う展開で、満塁の場面だ。リーグ戦再開から2試合で1点、0点と得点力不足に苦しむチームにとって、最大の好機だった。

中西氏 ここまで無失点に抑えていた上茶谷を降板させたのは、少し早いと思った。しかし相手が動いたのなら、阪神ベンチも動いて、相手にプレッシャーをかけるべきだ。あの局面、やはり右打者のほうが石田も嫌なはずだ。中日戦で打線が打っていれば、話は別だが、2試合で1得点。代打原口で勝負をかけ、次は北條や上本でたたみかける。選手任せではなく、ベンチが点を取りにいくという姿勢を見せてほしかった。

木浪は二ゴロに倒れ、ゼロ行進は続く。7回以降は得点圏に走者を進められなかった。ピンチをしのいだDeNAは8回に貴重な追加点を上げた。交流戦明けもいまだ勝ち星なく4連敗。先発西は6回2失点ながら、2カ月近く勝ち星がない。今季は14試合に先発し、12度も先制点を許している。

中西氏 西は防御率は2点台といいが、なぜ勝ち星が伸びないのか。打線がどうこうと言いたくなるだろうが、先発投手の基本は味方が先制点を取るまで踏ん張ることだ。勝てる投球内容だけに、もったいない。もちろん、この日も野手に拙いプレーはあった。2回の一塁走者マルテは二塁へのライナーに、滑って帰塁することなく、アウトになった。一塁コーチの指示になかったように見える。5回には木浪が投げても間に合わないのに、一塁へ悪送球。これは判断ミスだった。チームが1つになれていない、ちぐはぐさ。状態の悪さが出た試合だった。だからこそ、ベンチが1点を取りにいく姿勢が必要だった。