日刊スポーツ評論家の篠塚和典氏(63)が巨人の宮崎キャンプをチェック。無観客の影響を指摘した。

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宮崎空港のロビーに足を踏み入れて、人が本当に少ないと感じた。キャンプが始まっているにぎわい、活気がない。そのまま、サンマリンスタジアム方面へ足を運んだが、分かってはいたことだがファンの気配は皆無だった。分かっているのは報道陣だけ。これは、大変な中でのキャンプになっているとあらためて実感した。

ファンがいない中での練習が、選手にどういう影響が出るのか。私は巨人がまだ多摩川グラウンドで練習をしていたころを知っているので、ファンの方の視線が生み出すほどよい緊張感、視線の中でプレーするやりがいを知っている。

プロ野球選手は常に見られている。その中で「下手なバッティングはできない」「守りでみっともない姿は見せられない」。そういう思いで練習していた。守備でのあと1歩が出たり、ランニングでもうひと踏ん張りができた。実はそれが、知らず知らずのうちに練習として自分の力になっていたんだと感じる。こうして無観客の中で練習する選手を見ると、いかに異常な中でキャンプをしているか、その怖さも感じる。

新人選手は、アマチュア時代に経験したことがない注目の中で練習し、プレッシャーや緊張から実力を発揮できない。しかし、常に注目されてきた人気球団の巨人が、今度はいきなり無観客の中でキャンプを送る特殊性は、安易に片付けられない。どんな影響が出るのか想像もつかない。ファンがいなくて寂しい、そんな表面的な問題ではない、ということだ。

ただ、ないものを憂いてばかりいても仕方ない。ファンはいなくても、監督、コーチ、トレーナー、スタッフ、そしてカメラマン、記者、そういう人たちの視線を「自分は見られているんだ」と、常に意識しながら練習に励んでもらいたい。

紅白戦では、若手主体のチームながら一塁への全力疾走が足りないと感じた。さらに見逃し三振した後にベンチに歩いて戻る姿を見ると、これがファン不在の悪影響ではないことを願いたくなる。ファンの目がないというデメリットを、自分たちが高い危機意識で補わなくてはならない。そういう特別なキャンプと言える。(日刊スポーツ評論家)

紅白戦 1回表紅組1死一、三塁、犠飛を放ち、ベンチに迎えられる大城(撮影・狩俣裕三)
紅白戦 1回表紅組1死一、三塁、犠飛を放ち、ベンチに迎えられる大城(撮影・狩俣裕三)