オリックス吉田正尚外野手(27)がマー君攻略を果たした。楽天戦で6回に田中将大投手(32)から逆転3ラン。

歴代最多の3021試合出場で「打者のスイングを1番多く間近で見てきた名捕手」の谷繁元信氏(50=日刊スポーツ評論家)は以前から、吉田正のスイングにぞっこんだ。スイング論を展開する。

    ◇   ◇   ◇

捕手として1番近いところで打者のスイングを見て、観察してきた。あまり、抱かない感情ではあるが「今、1番格好いい」と思うスイングはオリックス吉田正だ。

本当に無駄がない。シンプルにスッと立ち、タイミングを取りながらトップの位置に上げる。少しの「間」が取れない時は崩されやすいが「間」が取れた時は高い確率で捉えている。スイングはコンパクトだが、パワーが集約されている。現役時代に対戦した打者で言えば、元広島の前田智徳も同じようにシンプルな打ち方で格好良かった。そう思う打者はあまりいない。

「見ていて楽しい」と感じる打者はまた違う。今で言えば売り出し中の阪神佐藤輝がそうだし、ソフトバンク柳田、対戦経験がある中ならイチロー、小笠原道大、和田一浩がそれにあたる。同じプロだから、フルスイングできることのすごさが分かるし「体勢が崩れるほど、そこまで振るか?」とマスク越しに笑ってしまうこともあった。

「格好いい」「見ていて楽しい」に当てはまらないのは松井秀喜だった。正直、ネクストでの素振りを見ていて不器用なスイングにしか思えず、それだけなら打たれる気はあまりしなかった。だが打席内でのスイングアーク(バットのヘッドが描く円弧)はまるで違った。「こんなに大きな軌道を描くのか」というギャップがあったし、それが飛距離の源だったと思う。(日刊スポーツ評論家)

オリックス対楽天 6回裏オリックス1死一、二塁、吉田正尚に左越え3点本塁打を打たれがっくりする田中将(撮影・前岡正明)
オリックス対楽天 6回裏オリックス1死一、二塁、吉田正尚に左越え3点本塁打を打たれがっくりする田中将(撮影・前岡正明)