阪急ブレーブスで通算284勝を挙げ、中日で監督も務めた山田久志氏(72=日刊スポーツ評論家)が、好調オリックスを分析した。阪急として最後に優勝した84年に13連勝して以来の11連勝で臨んだ24日は日本ハムに敗れて、快進撃は小休止。37年前の主力で阪急・オリックスOB会長を務める山田氏は、投打の新戦力による勢いを評価しながらV争いを熱望した。首位オリックスは25日から本拠地で西武3連戦を迎える。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

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オリックスはここにきて、チームカラーが変わったようにみえる。カード3戦目は敗れたが、状態は悪くない。だから余計に感じるのかもしれないが、1人1人が失敗を恐れず、はつらつとプレーしている。

もっとも大きいのは、先発の態勢が整ったことだ。なかでも宮城の安定感は抜群で、その勝ち星がチームの好調を支えている。

山本の働きは想像ができた。昨季も内容が良かったから、得点力が上がればこれぐらいはやってくれるという計算は立った。しかし宮城の台頭は正直いって想定外だ。

田嶋、離脱の山岡ら、もっと勝てるはずの投手もそろっている。後ろはヒギンス、平野佳で固まりつつある。能見、比嘉らがいて「左腕」「サイドスロー」など中継ぎもバラエティーにとんでいる。

「打」では杉本が目覚めた。持ち前の長打に、率を上げることもできる。ジョーンズ、ロメロの外国人が機能していれば出番が少なかった。こちらも「投」の宮城と同じで、頼もしい戦力に育った。

吉田正は長打も期待できる。1、2番は福田、宗の左2人で固まってきた。宗も正レギュラーまではいかないが自信をつけ、紅林もいる。相手が吉田正だけを警戒する打線ではなくなったということだろう。

12連勝していれば、前身の阪急ブレーブス以来37年ぶりだったという。当時はまったく“穴”のないチームだった。ポイントだった捕手は、それまで中沢(伸二)さんだったが、新人王を取った藤田(浩雅)が出てきた。

わたしも先発で、雄ちゃん(今井雄太郎)が一角をになって、馬力があったヨシ(佐藤義則)がいて、リリーフ型ではなかったが、スタミナ不足で後ろに回した山沖(之彦)の抑えがはまった。

福ちゃん(福本豊)も健在で、ブーマーの働きは傑出していた。3冠王を獲得した助っ人だが、一塁守備も抜群。打つだけでなく巨体を揺らした走塁もアグレッシブで素晴らしかった。

昨シーズン途中から指揮を執る中嶋監督だが、当初は自身が思い描いた戦いができなかった。だが今年は監督、コーチ間のコミュニケーションも取れているようだ。

2位以下にソフトバンクや楽天が続くが、戦力層はソフトバンクにかなわないし、いずれメンバーがそろう。まだまだ何が起こるか分からない。経験の浅いオリックスだが、このまま優勝争いに絡んでいけるように、“熱パ”を期待したい。

オリックス杉本(2021年6月22日撮影)
オリックス杉本(2021年6月22日撮影)