10回裏日本無死一、二塁、犠打を決める栗原(撮影・河野匠)
10回裏日本無死一、二塁、犠打を決める栗原(撮影・河野匠)

タイブレークの末に勝利を収めた日本の攻撃は、米国とは違う野球のきめ細やかさが表れた。米国の強攻策とは裏腹で、10回裏は代打栗原が初球に送りバントを成功させ、続く甲斐も初球打ち。わずか2球で決めた鮮やかなサヨナラ勝利だった。

その伏線は、6回から千賀、山崎、大野雄、栗林とつないだリリーフ陣がつけいる隙を与えなかったことにある。特に2イニングを封じた千賀にメドが立ったのは一番の収穫だった。今後どの場面でいかに投入するかは勝利の行方を左右するポイントになるだろう。

左から侍ジャパンの千賀、山崎、大野雄、栗林
左から侍ジャパンの千賀、山崎、大野雄、栗林

よく勝ち抜いたゲームだが反省点もあった。先発した田中将には少なくとも6回ぐらいまで投げきってもらわないと継投の組み立てが難しいと読んでいたが案の定だった。誤算だった田中将の代え時も含めて継投は後手に回った。

WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)は決勝までのシミュレーションが必要だったが、「球数制限」のルールがない五輪のリリーフ起用は、「場面」「相手打者」などシチュエーションを見極めながらの人選がカギを握っている。

その意味でも投手任せでなく、ベンチが動かなければいけない。この1勝が物語っているように好投手がそろっているのだから“出し惜しみ”は厳禁だ。6回の吉田正に左腕ゴースをつぎ込んだ米国のように、相手を困らせるような継投を先にやっていくことだ。

韓国との準決勝は最大のヤマ場になる。チームが勝つことが一番だから、なにも選手に気を使う必要はない。とにかく勝ちきること。そのためには日本の武器ともいえる投手力を押し出しながら、そして「継投で攻める」ことだ。(日刊スポーツ評論家)

10回裏日本1死二、三塁、右翼フェンス直撃のサヨナラ打を放ち水を掛けられる甲斐(中央)(撮影・河野匠)
10回裏日本1死二、三塁、右翼フェンス直撃のサヨナラ打を放ち水を掛けられる甲斐(中央)(撮影・河野匠)