中田はチームの雰囲気を変えるものを持った選手ということを、移籍初スタメンの一戦で証明した。

1、2打席目は11球中9球と徹底した内角攻めにあった。2回は1、3球目をファウルにしたが、最後は手が出ずに見逃し三振。4回はカウント3-1から狙ったが、DeNA今永の際どい内角高めが狙いを上回り、止めたバットにファウルにさせられ、最後も詰まった二飛に終わった。弱点の速い球を内角に集められ、今永の速球のキレも実際に良かった。

3打席目は6回1死二塁。インサイドのさばきが窮屈に見え、バッテリーが基本の弱点を突いてくることを読み、腹をくくった。内角球を完全に狙い打って左翼席に運び、中田がもたらした流れで続くウィーラーが初球を同点弾とした。敗れれば同一カード3連敗の危機を一振りで救った。

空気を一変させることができる選手だし、一方で周囲に影響を与えやすい選手でもある。移籍初出場だった21日DeNA戦での姿勢には、少し気になる部分があった。初打席で四球を選んで、ゆっくりと一塁へ向かっているように見えた。9回の中飛も二塁ベース手前まで走れるぐらい高く上がった飛球だったが、走り始めが遅く、一塁ベースを回ったところまでしか行かなかった。

打席のプレースタイルは変える必要はまったくない。今まで積み上げてきたものを堂々と出せばいい。だがルーティンは変えられる部分がある。例えば今永は3アウト後は全力疾走でベンチに戻ってくる姿が目立つ。中田に攻守交代時に全力で走った方がいいとは言わないが、少しスピードを上げれば周りから見ても違いを感じられると思う。何かを変えれば、いい方向に働く可能性があるものはやった方がいい。

私自身もレギュラーを取ってしばらく経った時期や、40歳前後は手を抜く部分があった。常に100%ということは長いシーズンを戦う上で難しく、体と相談しながら抜き所をつくっていたが、周りから見ると手を抜いているように見えただろう。そう思われることは損をするし、自分で気付いて改めたが、後悔している部分でもある。やらないに越したことはない。

中田は本来は明るい選手で本当の思いを表現しながらやりたいと思う。巨人に移籍した経緯もあり、伝統球団で身構えるところもあるだろう。だが明るい姿勢でチームの力になってほしい。(日刊スポーツ評論家)

巨人対DeNA 7回裏巨人1死二塁、2点本塁打を放った中田(右)に手を振る長嶋終身名誉監督(左)(撮影・江口和貴)
巨人対DeNA 7回裏巨人1死二塁、2点本塁打を放った中田(右)に手を振る長嶋終身名誉監督(左)(撮影・江口和貴)
巨人対DeNA 7回に移籍後初の本塁打を放った巨人中田は8回の守備に就く際ファンの拍手にあいさつ(撮影・たえ見朱実)
巨人対DeNA 7回に移籍後初の本塁打を放った巨人中田は8回の守備に就く際ファンの拍手にあいさつ(撮影・たえ見朱実)