ロッテ打線はメンバーの名前だけではあまり感じられないが、すべてを兼ね備えている。足があり、粘れる人がいて、1発もあり、犠牲にもなれる。普通、打線のいいチームも長打力に偏ったり、すべての要素でバランスが整っていることは少ないが、ロッテは理想的だ。

対戦したソフトバンクのマルティネスは好調で、特に低めのチェンジアップは抜群で打者は手が出やすい。だが6回の菅野や、7回の角中はしぶとく見極めた。同点打の代打安田も粘りながら、高く浮いたチェンジアップを28打席ぶりに右前打で仕留めた。

チームとして意識しているのだろうが、これはできるようで簡単ではない。どうしても打者は打ち気が勝り、振りがちになる。以前、井口監督にどのように徹底させているのか聞いた時に「低いと思って見極めたのなら、ストライクと言われてもベンチの責任だと選手に伝えている」と話していた。そこまでベンチが請け負って、選手に植え付けた意識が年々、強固なものになっている。

徹底されているから主砲のマーティンが不在でも、打線としての形は崩れない。昨季は終盤の故障で長期離脱した時に5勝10敗1分けと影響は大きかったが、今季の欠場時は7勝4敗3分け。離脱が長引けば、しわ寄せは隠せないだろうが、短期間ならカバーできるだけの力がついた。

正直、強さは感じないが、それでも勝っているということは相手にとってみれば、相当嫌なものだ。残り1カ月も優勝争いで優位なのは間違いない。不安材料があるとすれば救援陣。救援防御率はリーグ2位で2点台と首位快走の要因の1つだ。だがこの日、登板したハーマンには不安が残るし、移籍した国吉も健闘しているが、相手も対応しつつある。守護神の益田も好守に救われて価値ある引き分けをつかんだが、マーティンの替えはいても、勝利の方程式の替えはシーズン終盤には簡単には見つからない。(日刊スポーツ評論家)