絶対に負けられないという巨人の戦いだったはずが、すでに逆転優勝を諦めたような試合になった。なぜそう思うのか? 若手選手は技術力が足りないし、主力選手のグラウンドでのプレーにも覇気を感じられなかった。

確かに現状のチーム状況は、極めて苦しい。1番の原因は主力選手の不振だが、どのチームにもこういう時期は必ずある。それを補うのが主軸以外の選手の“働き”だが、現状では「打つ」という以外の“働き方”が分かっていない。松原、若林、北村にとっては来年以降、レギュラーを狙ったり、レギュラーを確定させるためのチャンスだが、成長しているようには思えなかった。

まずは初回、先頭打者で四球で出塁した松原は、2球目に盗塁を試みて楽々アウト。「セーフになるために必要なこと」を考えていない。初球はチェンジアップが高めに抜けてボール。盗塁失敗した2球目、捕手は外角に構えていた。自分が四球になった打席でも、真っすぐを7球続けて最後はスライダーがすっぽ抜けてボール。ストライクを取るなら真っすぐだと予測はついたはず。

外角の真っすぐならば走りにくいし、制球力に苦しんでいるサイスニードに対し、焦って走る必要はない場面だった。松原は今季、15個の盗塁を決めているが、いいスタートが切れなかったときにストップする技術がないから7個も失敗している。すぐに身に付く技術ではないが、ストップする練習をしてないのだろう。

2回1死二、三塁から空振り三振した北村も、成長を感じなかった。三振だけはしないように気をつける場面だが、カウントで追い込まれる前の工夫がない。真っすぐに絞っていたなら4球目のファウルを打ち損じてはいけない。一塁も空いていて次打者は投手。ヤクルトバッテリーは臭いところを突いてくる確率が高いのに、2球目の外角スライダーを簡単に見逃してストライク。「臭いとこ」=「外角」という意識を高めていれば、バットには当てられたはず。真っすぐを仕留め損なう技術しかないなら、状況によっては頭を使って最低限の仕事をするぐらいの工夫はできるようになってほしい。

5回の失点は坂本の送球に問題があった。先頭打者のショート内野安打もワンバウンド送球で一塁手の北村が捕れなかった。その直後のショートゴロも、きちんと二塁手の若林に送球していれば併殺が取れたかもしれない。坂本クラスの選手が2度も続けてミスしていたら、チームに与える影響は大きい。

ベンチの指示ミスもあった。1死一塁の状況から中村に右中間を破る二塁打で先制点を奪われたが、右翼手が定位置かそれより前に守っていた。この場面は一塁走者をかえしてはいけない場面であり、中村の逆方向への打球は飛ばないという判断があったのかもしれないが、一塁走者のオスナをホームにかえしているようでは話にならない。

松原、若林、北村には「打つ」という技術を磨く以外の向上心を感じない。これでは主力が不振のときにチームを助ける働きはできないだろう。坂本にしろ、ベンチの指示ミスにしろ、普段の試合であれば「ささいな油断」と感じだけかもしれない。しかし、この試合に限っていえば「諦めた」と感じてしまう。残念な試合になった。(日刊スポーツ評論家)

ヤクルト対巨人 2回表巨人1死二、三塁、北村は空振り三振。投手サイスニード(撮影・浅見桂子)
ヤクルト対巨人 2回表巨人1死二、三塁、北村は空振り三振。投手サイスニード(撮影・浅見桂子)