オリックスは宗の1発に救われたが、ちぐはぐな攻撃が目立った。

吉田正が不在、紅林も10日に死球を受けてベンチを外れた。戦力を削られた状態では、1発に頼るのではなく、細かい野球をやっていかなくてはならない。

しかし初回、2回、3回と無死一塁から1点も取れなかった。1回は併殺。3回は8番伏見が出て、上位で得点しなければいけない状況下で9番太田がバントを失敗した。構えから絶対に成功させてやるんだという気持ちも見えず、初球を簡単に打ち上げた。後続が安打でつないだだけに、取れるところで点を取っておかないと。負けてもおかしくない展開だった。

2点を追う6回には、1死二塁から山足がプッシュバントした。最低でも同点としたい場面で山足にはヒットが求められる。もし打てなくても4番杉本が控え、二走は俊足の宗だ。無理して走者三塁にする必要はない。そこはセーフティーではなくて、絶対に打ってやるという積極性がほしかった。結果的に判定が覆って2死三塁になった。ロッテからすれば、難敵杉本は四球でもいい場面。そこで杉本が「自分が決めなくては」という姿勢になってしまい、低めに手を出して三ゴロに倒れた。

一方でロッテ側を見ると、少ないチャンスを着実に生かして得点していた。後半戦5連勝とエースの働きをした小島の登板試合で負けられない。レアードのソロも、荻野の三塁打と中村奨の適時打も、何とかしなければいけない中でできることをやった。

小島は球数の少なさから見ても、継投はあり得なかった。88球目まで最高の投球をして、89球目で同点2ランを打たれた。これが野球の怖さ。最後の1球で全部が無駄になってしまうが、今日の小島は責められない。打った宗を褒めるしかない。素晴らしいホームランだった。

引き分けて試合後、小島はグラウンドで涙を流した。勝って、うれしくて泣くのはいい。だが打たれたくらいで泣いてはいけない。まだ勝負は終わっていないのだから。(日刊スポーツ評論家)

オリックス対ロッテ 8回裏オリックス2死一塁、宗に右越え同点本塁打を打たれがっくりする小島(撮影・前岡正明)
オリックス対ロッテ 8回裏オリックス2死一塁、宗に右越え同点本塁打を打たれがっくりする小島(撮影・前岡正明)
オリックス対ロッテ 小島(左)に声を掛ける井口監督(撮影・前岡正明)
オリックス対ロッテ 小島(左)に声を掛ける井口監督(撮影・前岡正明)