阪神がヤクルトとのシーズン最終戦を引き分け、逆転優勝は厳しくなった。日刊スポーツ評論家の梨田昌孝氏(68)は両軍無得点に終わった試合のカギを解説した。

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最後までどちらに転ぶかわからなかった一戦は、矢野、高津両監督の采配によって、0対0という究極のドローに終わった。

梨田 阪神ガンケル、ヤクルト高橋の両先発は非の打ちどころのない投球だった。そうは言っても、阪神は点をとって勝たないと終わってしまうわけで、少ないチャンスをモノにしたかった。その点、ベンチワークとしては惜しいというより、もったいない結果になった。

4回まで高橋に完全に抑えられたが、5回に糸原、大山の連打で好機をつくった。阪神ベンチは7番小野寺の初球にバスターをさせたが、これがライトへの凡フライで失敗。後続の坂本、ガンケルも打ちとられた。

梨田 なぜバスターだったのだろうか。定石はバントだ。ヤクルト内野陣のチャージはそうでもなかったし、きっちりとバントで二、三塁にしたほうが得点できる確率は高かったはずだ。小野寺がバントを得手にしていない判断かもしれないが、9番ガンケルを代えるわけにはいかないし、得点圏に走者を進めて、8番坂本にかけるところだった。どこかでバスターエンドランならわかるが、あの場面のバスターは、攻めたというべき作戦とは言えないし、理解に苦しむ。

9回の阪神は、先頭の中野が中前打、続く近本のバントで1死二塁になった。しかし、マルテが一邪飛、糸原が左飛に倒れた。

梨田 ヤクルトは高橋の7回まで80球の球数、投球内容をみたら、もう1イニング任せる選択もあったが、8回からセットアッパー清水へのスイッチを決断した。9回は抑えマクガフがマルテにカウント3-1になった時点で一塁に歩かせることも考えられた。だがマルテの調子が上がっていないと判断したのだろう。そのまま勝負にいったのは高津監督の選手に対する信頼感が伝わってきたし、その采配がはまった。マルテが3-1から配したボール球のスプリットに空振り、最終球も打ちあぐねていると捕手中村が選択したストレートで一邪飛に抑え込まれた。阪神は中野が出塁した4、6回は走らせて揺さぶるべきだった。

今となっては、ヤクルトの甲子園胴上げを阻止したことだけが、唯一の救いになった。

梨田 厳しくなった阪神だが、まだ4試合を残しているし、CSもあるわけで、サンズも佐藤輝も、それぞれが調子を上げていく、つまり勝ち続けるしかないということだ。

【取材・構成=寺尾博和編集委員】