オリックスは中嶋聡監督(52)の強気な采配がことごとく“吉”と出た一戦だった。9回は初戦に決勝打を放ったT-岡田が、ロッテ益田に追い込まれながらもうまく右前にはじき返した。状況を考えれば安達はバントのはずだった。
ここでオリックスは強攻策を選択するわけだが、確率的に併殺のリスクも十分に考えられる場面だ。だが安達が初球のバントを失敗すると、すかさずサインを切り替えた。その2球目は安達が打つ構えから打ちにいって左前打になった。
9回無死一、二塁。ロッテは前の安達も、続く7番小田もバントで走者を得点圏に進める作戦をとってくると想定しただろう。そこを今度は小田に初球バスター、前に出てきた三木の一塁線を抜く二塁打で同点だから、中嶋監督の采配が見事にはまった。
ただ、勝負のアヤは1点ビハインドの6回にもあった。1死から福田が右前打で出塁すると、続く2番宗に同じようにバントではなく強振させている。カウントによってはエンドランも考えられたが、岩下の初球フォークを右越え2ランでひっくり返した。
初戦先発の山本が完封したことで、チームの流れをつくったのは大きかった。また2戦目は宮城でなく、相性で田嶋を立て、機をみた継投で逃げ切った。この一戦も積極的に早めのリリーフをつぎ込む戦いはベンチが思い描いた通りだったはずだ。
短期決戦でロッテに流れを渡さない戦いだった。レギュラーシーズンを制したように、CSでも中嶋監督の采配に選手が応えた形だ。オリックスの投手陣が、いかにヤクルト打線を封じるか、面白い日本シリーズになる。(日刊スポーツ評論家)