打つべき人が打てば、こういう展開になる。20敗しているチームの戦いではなかった。前夜も指摘したように、佐藤輝と大山に当たりが出てきただけに、5、6番が打てば、得点能力が上がる。この日は糸井と中野がしっかりと役割を果たした。あらためて先手を取る重要性を感じた試合だった。先制して、先発投手が試合をつくれば、そうは負けない。リードすれば、相手投手も2番手以降は力が落ち、追加点を取る確率も上がる。逆の展開なら、相手はいい投手が出てきて、攻略しづらくなる。やはり先行逃げ切りが勝負の基本的なセオリーだ。

今季はすでに6試合で完封負けを喫しており、いかに打線が打っていないかが分かる。そういう意味では、1番近本に、佐藤輝のクリーンアップ起用というのは外せない。ベンチも当然、手を打つことが考えるが、動かしていい打者とそうではない打者がいる。打順というのは守備位置と同じだ。異なるポジションでいきなり守れるはずがない。近本は3番で、全くボールが見えなくなった。打者の特性を生かし、打線の骨格を安定させることがつながりを生む。

ガンケルはそれほど調子は良くなかったが、両サイドを突く投球で、持ち味を発揮した。先発陣は青柳、ウィルカーソン、ガンケルと開幕時にいなかったメンバーが入り、顔ぶれがそろってきた。それだけに打線次第で先行逃げ切りの形をつくることができる、

借金はまだ「15」もある。連勝で減らしていくというチーム状況ではない。カード勝ち越しでコツコツと1つずつ返していくしかない。去年は9月まで首位だったが、ひっくり返された。まだ4月と考え、2カ月で借金を返し、7月での5割を目指す。そのためにも、この日のような戦い方が大事になる。(日刊スポーツ評論家)

ヤクルト対阪神6回表阪神1死一塁、二塁盗塁成功、相手守備の乱れで三塁へと進塁する近本(左)(撮影・足立雅史)
ヤクルト対阪神6回表阪神1死一塁、二塁盗塁成功、相手守備の乱れで三塁へと進塁する近本(左)(撮影・足立雅史)