ウィルカーソンは来日から5度目の登板となったが、安定した投球が続いている。彼の最もいいところは、制球力にある。この日はソトに与えた1四球だけで、すべてのボールをコントロールできている。初登板となった巨人戦(4月16日)を評論したが、この時はチェンジアップと直球主体の投球で、今回はチェンジアップの比率を減らして、スライダーを効果的に使っていた。

日本の打者が慣れてきた時にどう対処するかが課題だったが、5度目の登板で、カーブも含め、いろんな球種を制球よく操れることが分かった。直球の球速は150キロに満たないが、スピードガン表示には表れない球の強さを感じる。複数の配球パターンで組み立てられるので、捕手がうまくリードすれば、持ち味が出せるだろう。一本調子になると制球がいいだけに、連打を食らう恐れがある。そこを注意すれば、今後も6回2失点くらいという先発の役割、クオリティースタートを十分に期待できるはずだ。

試合のポイントでいえば、4回裏だ。DeNAは1点を返したが、宮崎、戸柱で追加点を挙げられず、2死一、三塁で一塁走者の牧を慌てて走らせた。梅野が三塁走者の動きを見ながら、落ち着いて、二塁で刺したが、このプレーで流れは完全に阪神のものになった。さらに1点取られて、2点差に迫られると、勝負は分からなかった。攻撃する側にとっては、100%セーフにならないといけない場面だ。1失点でしのいだのは大きく、阪神バッテリーの落ち着きが光った。

先発、リリーフ陣はともに状態がいいので、打線次第だったが、この2試合はうまくつながった。佐藤輝は内角のストレートに対し、しっかりと軸回転で打てていた。大山にも2本出たし、この調子を維持してほしい。この1週間は雨天中止があるなかで、2勝2敗の五分に持ち込んだ。いまだ勝てていない広島への対策を練る必要はあるが、いかに1週間の戦いで貯金をつくっていけるかが巻き返しの条件になる。(日刊スポーツ評論家)

DeNA対阪神 4回裏DeNA2死一、三塁、一塁走者牧は二塁盗塁失敗。野手は中野(撮影・加藤哉)
DeNA対阪神 4回裏DeNA2死一、三塁、一塁走者牧は二塁盗塁失敗。野手は中野(撮影・加藤哉)
DeNA対阪神 6回裏DeNA無死、関根大気を投ゴロに打ち取り笑顔を見せるウィルカーソン(撮影・菅敏)
DeNA対阪神 6回裏DeNA無死、関根大気を投ゴロに打ち取り笑顔を見せるウィルカーソン(撮影・菅敏)