この時期で11度目の完封負けは多すぎる。阪神は主軸が打ち4本塁打で勝った前夜の試合とは対照的な展開となったが、こういう接戦をモノにできるかがチームの強さを表す。無得点では勢いもなくなり、乗っていけない。

いかに1点を取るか、という点において、王者ヤクルトの試合巧者ぶりが際だった。7回に山崎がセーフティーバントで佐藤輝の悪送球を誘った。その後、2死満塁にもかかわらず、渡辺が再び三塁線にセーフティーバントを試みた。これはファウルになったが、意表を突いたり、弱点を狙う攻撃というのは、相手のミスを誘う。そういう姿勢が打線のつながりを生み、1点をもぎ取る形ができる。

確かに先発小川はストレートにキレがあり、打者2巡目からはその直球を意識させながら、変化球の割合を増やした。投球内容が良かったとはいえ、揺さぶりをかけていくことは必要なことだ。大山らが低めの球に手を出さずに3四球を選んだのは評価できるが、チャンスをつくった中で、あと1本を待つよりも、ヤクルトのようにセーフティーなど動かなければ、簡単には点は取れない。

この日でいえば、中盤までに1点でも取っておけば、同点で7回から勝ちパターンの投手を起用する展開になった。まだ20日から3連戦を残しており、劣勢でつぎ込むのは難しい。無得点であるがゆえに、7回にさらに2点を失う展開になった。そうなると、もう打つしかなくなる。阪神は経験のある選手もそろっており、いやらしい攻撃ができないわけではない。チームとして、徹底していくことが求められる。

接戦に強いチームがやはり上位にいる。交流戦を浮上のきっかけにするためにも、1点を取る攻撃にこだわらなければならない。(日刊スポーツ評論家)

ヤクルト対阪神 4回表阪神2死二塁、糸井は三振に倒れる(撮影・加藤哉)
ヤクルト対阪神 4回表阪神2死二塁、糸井は三振に倒れる(撮影・加藤哉)