昨季から少しずつ感じてはいたが、西武森友哉の捕手としての姿が見違えてきた。1つ1つの所作が丁寧だ。投球に対し、構える際にミットを動かさず、捕球面を投手に見せ続ける技術が備わった。多くの捕手は1度ミットを下に落としてから捕りたがる。捕球するタイミングは合わせやすいが、ミットを目標物として示し続ける方が投手は投げやすいと思う。

構えた際の足も、おろそかにしていない。走者なしで2ストライクまでは片方のヒザを地面につけているが、追い込んでからはヒザを上げている。ワンバウンドに対する振り逃げに備えている。基本だが意外と徹底している捕手は少ない。投手とのサイン交換も早すぎず、遅すぎず、迷いなく出している。何秒が適正というものではないが、心地よいリズムで投手に安心感を与えている。

森の成長は数字が証明している。投手陣の奮闘もあるが、防御率は12球団トップの2・37。森の捕手出場時は2・26と、さらに抑えられている。一方で自らの打撃は、この試合で打率2割台に乗ったところ。守備意識の比重の変化が影響していると思う。印象的には打撃7に対し、守備3だったのが、6対4、5対5ぐらいに変わった感じだ。これまでは打撃が良ければリードもさえていたが、打撃不振だと守りにも直結しがちだった。

だが今のバランスなら打撃と守備を冷静に切り離せる。この試合でも6回に1失点した直後の攻撃を先頭打者で迎えた。どう臨むか注目していたが、初球は完全に打つ気配を見せずに、ボール球を見逃した。初球を打って凡退すれば、さらに相手に流れが傾くところ。試合の流れを感じながら見送り、逆に2球目のファーストストライクを絶対に狙ったスイングで三塁打とした。この一打をきっかけに2点を奪い返し、戦況を変えた。

これまで打撃が評価され、守備は課題を指摘され続けてきた。悔しかったと思うし、今季は開幕直後に自らの行為で右人さし指を骨折。チームに迷惑をかけた思いも強いだろう。より捕手というポジションに向き合っているように感じる。

西武と言えば山賊打線の打高投低のチームだったが、今年は逆転現象が起きている。だが辻監督は本当はこういう守り勝つ野球を望んでいたのではないか。最近は厳しいコメントも減ったように感じる。理想の野球を体現しているのが、森の捕手力で、後半戦の主役になり得るチームだ。(日刊スポーツ評論家)

西武対日本ハム 試合後、ガッツポーズする西武森(撮影・滝沢徹郎)
西武対日本ハム 試合後、ガッツポーズする西武森(撮影・滝沢徹郎)
西武対日本ハム 試合に勝利しタッチを交わす森(左から3人目)ら西武の選手たち(撮影・滝沢徹郎)
西武対日本ハム 試合に勝利しタッチを交わす森(左から3人目)ら西武の選手たち(撮影・滝沢徹郎)