阪神は9連戦を零封負けで滑り出した。先発のアーロン・ウィルカーソン投手(33)が初回にポランコに先制3ラン、4回は中田にソロと2被弾で4失点。楽になった戸郷の前に打線は10残塁でプロ初完封を許した。日刊スポーツ評論家の山田久志氏(73)は伝統の一戦を「寂しい一戦」と振り返った。

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球宴まで残り4カードの阪神が、大事な9連戦の“頭”をとれなかった。勢いをつけるどころか、巨人戸郷に手痛い完封負けだ。

山田 このゲームのヤマ場はどこだ? って問われたとき、阪神も、巨人もポイントがない、寂しい一戦だったと言わざるを得なかった。ウィルカーソンがポランコに3ランを打たれたが、この3点ならなんとかなるだろうと思っていたら盛り上がりがなく淡々としていた。4回2死から中田に浴びた本塁打はちょっとこたえたが、戸郷が抜群だったかといえば、まったくそうは思わない。特に終盤はヨレヨレだった。阪神の敗因は簡単にいうとチグハグな攻撃にあった。

いきなり3点を追う展開になったが、2、3、4回と得点圏に走者を進めながらもホームにかえすことができず。3回2死一、二塁に佐藤輝が三飛、4回無死一、二塁からロハスの二遊間を抜けそうな当たりが遊ゴロ併殺だった。

山田 戸郷のコントロールはバラバラ、配球で勝負するタイプでもない。ストライクゾーンにはくるが、低いところに落ちたり、逆球を打ち損じてもらったりで、阪神により的を絞りづらくした。“間”を置かず、どんどん自分のペースで投げ込んでくるから、それに付き合うと、相手のリズムに引き込まれてしまう。4回のロハスの打った瞬間にヒットと思った遊ゴロ、8回近本のセンター寄りへの左飛をアウトにした巨人の2つのポジショニングは、戸郷を乗せた要因だった。これが逆の結果だったら試合はもつれていた。

大量コロナ感染によってヤクルト戦が2試合連続中止で「中3日」の一戦だった。

山田 特に打者は夏場で自分を追い込みづらく調整が難しかったかもしれない。ただ今に始まったことではないが、1番から4番まで左打者が並ぶ打線はいかにも苦しい。チーム編成として右打者が1、2枚必要だ。巨人? ずっと見ているが、今の投手陣を整備するのは極めて難しい。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

阪神対巨人 試合後のスコアボード(撮影・前田充)
阪神対巨人 試合後のスコアボード(撮影・前田充)
阪神対巨人 阪神に勝利し、原監督(中央)に迎えられる戸郷(左)と大城(撮影・河田真司)
阪神対巨人 阪神に勝利し、原監督(中央)に迎えられる戸郷(左)と大城(撮影・河田真司)