ソフトバンクで守護神を張ってきた森は先発の適性があることを示した。球種はカットボール、フォーク、ツーシームと元々豊富で、特にカーブはカウントを整える上でも有効的だった。3回先頭のマルモレホスに対しては、カウント0-1から91キロの遅球でストライクを奪った。抑えだったら接戦の状況下では投げにくいボールだが、先発ならではの1球だった。

3点リードの3回2死から今季1本塁打だった太田にソロを許した。気が緩んだと思うが、先発なら力の抜きどころも必要になる。続けて三塁打を打たれたが、9回の厳しい場面をくぐり抜けてきた嗅覚がある。次の失点は局面が変わる可能性が高まるからこそ、続く西川は制球ミスすることなく二ゴロに打ち取って、流れを断ち切った。

今季で言えば中日根尾の野手からの投手転向に次ぐぐらい、大胆な挑戦といえる。開幕を守護神で迎えた投手が、シーズン終盤でプロ初の先発挑戦をする前例はあまりない。

かつて中日でもセットアッパーだった浅尾が先発挑戦した。前年の秋季キャンプから準備をし、オープン戦でも結果を出して開幕投手まで務めたが、長いイニングを投げる中での力の配分が難しく、中継ぎに戻った。簡単な挑戦ではないが、ヤクルトやメッツなどで先発で活躍した吉井理人さんや、DeNA、巨人で先発の軸を務めた山口俊のように成功例もある。

森は13日の西武戦で3回39球を投げて中2日、この日は緊急先発だったこともあり、30球を超えてからは腕の振りも鈍くなった。本格的な先発挑戦は来季からになるだろうが、今季もこれからの佳境での先発で4、5回を50球ぐらいでまとめられる力はある。先発以外にもロングリリーフでも起用できて、優勝へラストスパートをかけるチームにとって大きなプラスになる。(日刊スポーツ評論家)