13年WBCメンバーでもある日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(41)が、大谷翔平投手(28=エンゼルス)らメジャー組が今春初めて名を連ねた侍ジャパン打線に太鼓判を押した。

得点力アップのポイントを「いかに大谷から逃げさせないか」と表現。1番ラーズ・ヌートバー外野手(25=カージナルス)、2番近藤健介外野手(29=ソフトバンク)の「出塁力」に注目した。【聞き手=佐井陽介】

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これまで得点力を不安視する声もあがっていた侍ジャパンですが、大谷選手、吉田選手、ヌートバー選手のメジャー組3人が一気に雰囲気を変えてくれましたね。打線は現状、大谷選手や吉田選手に頼らざるをえません。いかに大谷選手から逃げられない形を作るか、勝負させるか。このポイントに焦点を絞れば、この日は理想的な形を作れたのではないでしょうか。

大谷選手が放った3回、5回のアーチはともに3ラン。2打席とも2死一、二塁で打席が回り、相手からすればどう考えても歩かせづらい場面でした。これ以上塁をためて大量失点したくない。際どいところを突きながらでも、できれば勝負したい。大谷選手にそんな状況を用意できるかどうかがゲームのカギを握る侍ジャパン打線の中で、1番ヌートバー選手と2番近藤選手の「出塁力」は非常に効果的に映りました。

2四球を選んだ近藤選手の選球眼は今更説明するまでもありません。ヌートバー選手に関してはいい意味で少しイメージが変わりました。もうちょっと豪快なタイプかと思いきや、コンパクトにも振れるし、状況に応じてスイングも変えられる。ほぼ初めて打撃内容を見させてもらいましたが、大谷選手の前を任せられる力が十分あることをあらためて証明してくれましたね。

大谷選手の前に走者がたまっていれば、たとえ結果的に歩かされたとしても、後ろの打者に「内野ゴロや犠飛でも1点」という楽な場面を作りやすくなります。大会屈指の投手陣を誇る侍ジャパンの場合、こういう形でも1点1点を積み重ねていければ、必然的に勝利は近づいてくる。そう考えても、WBC本大会ではやはり「どれだけ大谷選手の前に走者をためるか」に尽力すべきだと考えます。

大谷選手のアーチ2本はもう評論のしようがありません。球場が狭くなったのかと感じたぐらいです。ただ、大谷選手のすごさはすでに全出場国が把握しています。塁をためられる選手を直前に置く。さらに後ろを打つであろう村上選手の状態が上がってくれば、大谷選手が勝負してもらえる回数は増えるはずです。大谷選手がスイングする回数を1球でも増やすことが、世界一への近道ではないかと感じます。(日刊スポーツ評論家)

阪神対侍ジャパン 9回表侍ジャパン2死、二塁打を放つ近藤。投手西純(撮影・江口和貴)
阪神対侍ジャパン 9回表侍ジャパン2死、二塁打を放つ近藤。投手西純(撮影・江口和貴)
阪神対侍ジャパン 3回表侍ジャパン2死一、二塁、大谷は中越え3点本塁打を放ち、ポーズをとりながら笑顔でダイヤモンドを1周する(撮影・上山淳一)
阪神対侍ジャパン 3回表侍ジャパン2死一、二塁、大谷は中越え3点本塁打を放ち、ポーズをとりながら笑顔でダイヤモンドを1周する(撮影・上山淳一)