WBCは日本が3-2で米国を下し、3度目の優勝を果たした。現地を訪れた日刊スポーツ評論家の佐々木主浩氏(55)が、試合を評論した。

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パワーでも勝てるという、新しい日本野球を世界に見せられた。これまでは盗塁などの機動力やバントを駆使してというスモールベースボールで世界一になっていたが、野手は日本を代表するスラッガーの村上、岡本が本塁打を放った。投手もパワーピッチングができる投手をずらりとそろえた。アンダースロー投手で目先を変えて、変化球でかわしてということはなく、150キロ台の直球でガンガン押し切った。優勝の色合いがこれまでとはまったく違う。

栗山監督が「日本のストロングポイント」と語っていた通り、投手陣が力を発揮した。今永は本調子ではなかったが、緊張感が相当あったのだろう。本塁打の1点によく抑えた。ふた回り目はきついなと感じていたところ、スパッと交代を決断した。7投手で継投したが、これだけ多く使うと1人ぐらいは調子が悪い投手がいるもの。若い投手がプレッシャーの中で力を発揮した。選手を信じた采配は素晴らしい。

捕手中村の配球もさえていた。6回2死一、二塁の好機で代打を出さなかったのは、中村のリードで逃げ切りを計算していたからだろう。ベンチに山川が残っていたので、攻撃的な監督なら代えていたかもしれない。パワーのある打者に内角を攻めるのは勇気がいるが、直球をうまく使っていた。フォークボールなど変化球とのコンビネーションが抜群だった。臆せずに要求に応えた投手陣の能力も評価したい。

打線は、村上の同点本塁打が大きかった。先制点を取られて、抑えられれば嫌な流れになる場面。あまり初球に手を出さない村上が、すぐに打ち返した。初球から振れるのは、準決勝のサヨナラ打で吹っ切れたのだろう。1次ラウンドでは結果が出なくて悩んだこともあったと思うが、この2試合での働きは値千金といえる。

大会を通じ、野手陣は大谷が、投手陣はダルビッシュが引っ張った。2人のメジャーリーガーが、互角以上に戦えるんだと、チームメートを勇気づけた。米国に乗り込む際に、精神的支柱がいたのは大きい。誰もが緊張する最後は大谷が締めた。野手として試合に参加していたことで多少はゲームに入りやすい部分があったと思うが、1点差で力む場面。強い気持ちを感じた。最高の形で大会を締めくくってくれた。(日刊スポーツ評論家)

世界一を決め、歓喜の輪の中でダルビッシュ(中央右)と抱き合う大谷(撮影・菅敏)
世界一を決め、歓喜の輪の中でダルビッシュ(中央右)と抱き合う大谷(撮影・菅敏)
世界一を決め、優勝トロフィーを手にする大谷(撮影・菅敏)
世界一を決め、優勝トロフィーを手にする大谷(撮影・菅敏)