12連敗中の西武隅田知一郎投手が6回を1失点に抑え、うれしい勝ち星を手にした。

隅田にはよく覚えておいてほしい。どうして勝てたのか。これまで苦しんできた自分と、何が違ったのか。私はこれまでの隅田のピッチングを見てきたからあえて厳しく指摘する。甘くなって打たれることを恐れていては、いつまでたっても負のスパイラルから抜け出せないぞと。

立ち上がりは、これまでと同じように2ボールにする場面があった。打者近藤と栗原。近藤は遊ゴロ、栗原は四球だった。ピッチャーとは、まず勝ちたいと考える。その次には打たれたくない、そして厳しくコースに投げなきゃと、どんどん自分を追い込んでいく。

最終的には、甘くならないようにと思うがあまり、際どいところを攻めて四球。走者をためて、甘くならざるを得なくなり長打を浴びる。これがいわゆる投手が陥る負のスパイラルだ。

この日も、その影がちらついただろう。だが、2死一、二塁で牧原大には1-0から甘め真っすぐで内野フライに打ち取っている。

場面は変わって1点リードの4回2死二塁で、増田への初球甘めのまっすぐを中越え同点適時打とされた。しかし、私はこれでいいと思って見ていた。怖がっていては先に進めない。打者は良くて3割。7割は凡退する。それを忘れずに、腹をくくって投げていくしかない。早いカウントから若干甘めでもストライクを投げる。今の隅田にはその姿勢こそが必要だった。

6回まで走者を背負って、隅田が若干甘くてもストライクを投げた場面は5度あった。そのうち失点につながったのは1度。全部を抑えるのは理想だが、勝ち星を積み上げていくためには、どこかで割り切って攻めていくしかない。

カーブ、スライダー、チェンジアップを駆使して、柘植のサインを信じて、緩急を使ってどんどん攻めてほしい。ここまで12連敗してきたが、決してそこまで負け込むピッチャーではない。援護がなかったり、勝負どころで打たれたり、運もなかったが、この日のピッチングを大切な教訓として、この試合をスタートと思って投げてもらいたい。苦しんでつかんだ白星の中に、得難い学びがあることを胸に刻んでほしい。(日刊スポーツ評論家)

西武対ソフトバンク 5回表を無失点に抑え拳を握る西武隅田(撮影・横山健太)
西武対ソフトバンク 5回表を無失点に抑え拳を握る西武隅田(撮影・横山健太)