2025年、球界では「トルピード(魚雷)バット」が注目の的となっている。大リーグでは開幕直後、ヤンキース勢が本塁打を量産。日本球界でも西武源田壮亮内野手(32)を皮切りに西武中村剛也内野手(41)、阪神大山悠輔内野手(30)、日本ハム清宮幸太郎内野手(25)らが公式戦で試している。果たして、この新形状バットの行く末は? 日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(43)が通算2099安打を記録した専門家ならではの見解を示した。【聞き手=佐井陽介】
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4月から「魚雷バット」が注目を集めています。すでに使用が公となっている選手の他にも、多くの打者が試し打ちは終えているだろうと想像します。では、この魚雷バットは今後、一気に普及していくのでしょうか? 個人的にはスタンダードなバットとなる可能性はそこまで高くはないと予想しています。
魚雷バットは一般的なバットに比べて先端部分が細く、最も太い部分がグリップ側にあります。この特徴を生かせる選手にとっては有益なバットとなるかもしれません。とはいえ、合う合わないはあくまで人それぞれになると思います。
4月のある日、元巨人監督の高橋由伸さんと話をさせてもらう機会がありました。由伸さんは魚雷バットを振ってみたことがあるそうですが、バットを出しやすいけれど、ヘッドが効く感じはなかったようです。話を聞く限り、もし自分が現役時代に魚雷バットが登場していても、使いたいとは思わなかったかもしれません。私は基本的にヘッドに重さを感じながら打ちたいタイプだったからです。
一方で、いわゆるバットの“出”が良いのであれば、バットをボールにぶつけていきたいタイプの打者には合うかもしれません。もしくは、不調に陥ってバットの“出”が悪くなっている非常時の応急処置として使用するのも、有効な手段となる気がします。バットのミートポイントが手元になるので、内角球に詰まってしまいがちで悩んでいた選手にとっても、効果的なバットと言えるでしょう。
ただ、リスクもゼロではありません。内角球を克服したい選手が魚雷バットを使ったとしましょう。この選手は先端が細いバットを使うことで、今度はそれまで得意にしてきた外角球を仕留めきれなくなるかもしれません。そうなると、相手バッテリーは外角攻めを開始します。結果、元のバットに戻さざるを得なくなる可能性だってあります。
そもそも魚雷バットのような形状は過去にも登場しています。私が中学生ぐらいだった頃も、同じような形状の金属バットが発売されていた記憶があります。もし、この形状で多くの選手が成績を向上させていれば、爆発的に普及していたはずです。ただ、このバットがスタンダードになることはありませんでした。そんな経緯を覚えているから、今回も魚雷バットが定番になる可能性は高くないだろうと考えるのです。
誰にでも合うバットなのであれば、すでにメジャーリーガーの大半が使っているはずです。ただ、複数の選手が使用するヤンキースでもアーロン・ジャッジ選手は使っていません。バットの形状が変われば、打ち方も変わります。私の場合、シーズン中にバットを変えることには抵抗がありました。同じような考えを持っている選手も少なくはないのではないでしょうか。
むしろ、新しい形状のバットは調子の悪い選手の方が試しやすいかもしれません。阪神の大山選手にしても、まだ状態が上がっていないタイミングで魚雷バットを手にしています。先日、大山選手に直接聞いてみたところ、同じ重量でも魚雷バットの方が軽く感じるそうです。もしバットが出にくくなっていたのであれば、魚雷バットを使うことでバットを出しやすくして感覚を取り戻すこともできそうです。
とはいえ、バットを変えればすぐに打てるほど、バッティングは簡単ではありません。結局は選手の技術がベースにあって、プラスアルファの面で魚雷バットが有効か否か、という世界なのだと思います。もちろん、バリエーションの1つとして魚雷バットを持っておいて損はありません。自分の特徴を把握できている選手にとっては、より有効なバットと言えるでしょう。(日刊スポーツ評論家)
◆魚雷バット 今季ヤンキースの複数選手が使用し、開幕から3試合で15本塁打と爆発的な猛打を見せたことで注目された。「トルピード(魚雷)」と呼ばれ、魚雷やボウリングのピンのような形状。先端部分は細く、投球が当たる部分が最も太くなっている。野球規則(3・02)にある「バットはなめらかな円い棒であり、太さはその最も太い部分の直径が2・61インチ(6・6センチ)以下、長さ42インチ(106・7センチ)以下であることが必要である。1本の木材で作られるべきである」に準じている。日本では4月11日に規則委員会が容認。NPB公式戦では同18日に西武源田が初使用した。




